研究実績の概要 |
ストロンチウム原子の準安定状態(5s5p:3P2-5s5d:3D3遷移, 波長496nm)を用いた磁気光学トラップ(green MOT)の諸特性を効率的に調べるための実験装置の改良を主に行った。真空装置に関しては、これまで原子オーブンからの原子ビームを磁気光学トラップ用ガラスセルに直接入射していたが、回転導入機を用いた原子ビームシャッターを新たに導入し、原子ビームを完全に遮断できるようにした。この改善により、磁気光学トラップの寿命測定が正確に行えるようになり、ストロンチウム原子の様々な励起状態の緩和過程を詳細に調べることが可能となった。光学系に関しては、これまで自由空間で種々のレーザー光を真空装置に輸送していた方式から、光ファイバーによる輸送方式に変更した。また、これまでレーザー光の遮断には音響光学素子(AOM)もしくはメカニカルシャッターを用いていたが、これを光ファイバースイッチに変更した。これらの改善により、光学系が大幅に簡素化された。また、複数のレーザー光を光ファイバースプリッターおよびコンバイナーを用いて1本の光ファイバーに集約し、ファブリペロー共振器に導入することにより、複数のレーザー光の周波数を同時に安定化することが可能となった。具体的には、原子オーブンからのコリメートされた原子ビームのドップラーフリー周波数変調分光信号によって絶対周波数が安定化された461nm(5s2:1S0-5s5p:1P1遷移)光源からのレーザー光と、他のレーザー光(483nm, 487nm, 496nm)を共振器長を掃引したファブリペロー共振器に導入し、その透過スペクトルの形状(絶対周波数が安定化された461nm光の透過ピークに対する他のレーザー光の透過ピークの相対位置)をマイクロコンピュータで解析し、他のレーザー光(外部共振器半導体レーザー)の共振器長へフィードバックした。
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