研究課題/領域番号 |
21H01101
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
花垣 和則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (40448072)
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研究分担者 |
外川 学 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50455359)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒッグス / 湯川結合 / ピクセル検出器 |
研究実績の概要 |
本研究の学術的なゴールは,ヒッグス粒子がミューオン対に崩壊する事象を観測し,ヒッグス粒子とミューオンとの間の湯川結合定数を測定することで,第2世代フェルミオンの質量起源を解明することである。LHC実験の一つであるATLAS実験にて第3期運転で取得するデータの解析とともに,LHC高輝度化計画に向けたピクセル検出器開発を推進し,より高統計を使った高精度での湯川結合測定を目指す。
2021年度は,LHCがシャットダウン中であったことを受け,ピクセル検出器開発に注力した。本研究では,シリコンセンサーと信号読み出し用ICをバンプボンディング接続したのち,フレックス基板回路と接着する。これをモジュールと呼び,モジュール製造手法の確立が本研究のゴールである。1) シリコンセンサーと信号読み出し用ICを接続するバンプボンディングの技術開発を企業と共同で実施するとともに,フレックス回路との接着方法を研究した。塗布パターン,塗布量,塗布手法など種々のパラメータで条件出しを行った。2) 実機のモジュール製造は約2年間で2000個以上行わなければならないが,現在の製造方法では間に合わない。製造方法の見直し,必要な試験工程の選別が必要であることから,ダミーモジュールを使った各種試験を実施した。3) ワイヤボンディング保護手法として封止材を使うことを想定していたが,温度サイクルで機械的な負荷を発生させバンプボンディング剥がれの原因となることを突き止め,代替案として機械的な保護を提案した。CFRPによる保護を検討し,試作品の製造試験から,機械的保護で強度的にもスペース的にも使用可能であるかを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた技術開発自身はおおむね順調に進行している。予算の繰り越しを行ったが,これはATLAS実験全体の進捗に合わせるためである。製造工程を分担していることから,ATLAS実験グループ内の他研究機関からの供給品が必要であったり,各段階で全体のレビューを受けて計画を進める必要がある。一方,コロナ禍の影響を強く受けた欧米の研究機関は長期間ロックダウンしたことがあり,我々に比べて全体計画が大きく遅れた。そのために,供給品の調達が遅れ,さらにはレビューが開催されないために,実機製造に向けた進捗としては我々の計画も遅らせた。しかし,冒頭に記したように,技術開発自身は想定通りに進捗したので,「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
LHCの第3期運転は開始されるものの,取得データ量は,今までの収集量に比べて劇的に増加するわけではないので,まずは,実験再開後の検出器の性能評価に注力する。特に,ヒッグス粒子がミューオン対に崩壊する事象を捉えるためには,内部飛跡検出器とミューオン同定用検出器が重要な役割を果たすので,本研究では内部飛跡検出器の一つであるピクセル検出器のモニタリングならびに較正を行う。 高輝度化LHCに向けたピクセル検出期開発においては,実機製造を見据えた研究に移行していく必要がある。2021年度に実施した研究をもとに,引き続き製造方法の工程確立,実機大量生産時の試験項目の見直し,バンプボンディングの保護手法の確立と検証を目指す。
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