研究課題
これまでに開発・改良してきた一般化オーロラトモグラフィ解析ツールを、2018年2月18日に北欧の3観測点の単色光全天イメージャ(波長427.8nm)で撮影されたパッチ状脈動オーロラに適用し、オーロラ発光強度の3次元分布、並びに、降下電子フラックスのエネルギー分布の時空間変動を復元した。得られた解析結果をノルウェー・トロムソのEISCATレーダーで同時観測された電離圏電子密度の高度プロファイルと比較し、本手法がオーロラ3次元分布を推定するのに有効であることを明らかにした。上記パッチ状脈動オーロラに対して、さらに波長557.7nmの画像データを加えて解析を行い、電離圏電気伝導度の3次元分布を推定した。同様の手法を用いることにより、今後EISCAT_3Dレーダーによって電離圏の電場分布が得られれば、3次元電流系を推定することが可能となった。冬季にノルウェー・シーボトンの多波長全天イメージャによるオーロラの連続観測を実施した。ノルウェー・トロムソ、スウェーデン・アビスコ、フィンランド・キルピスヤルビ等に設置されているWatecイメージャやEMCCDイメージャと合わせて、オーロラトモグラフィ解析に利用可能なデータを取得した。取得したデータを分野標準フォーマットであるCommon Data Format(CDF)に変換し、ウェブサイトで公開した。シミュレーションにより、EISCAT_3Dレーダー・多点イメージャネットワーク観測による多層アークのモデルデータを作成し、一般化オーロラトモグラフィ解析の模擬実験を行った。これにより、本手法が多層アークの復元にも有効であることが示され、2023年冬季以降のEISCAT_3Dレーダー観測開始に合わせた共同研究の準備が整った。
3: やや遅れている
ノルウェー・シーボトンをはじめとする北欧のイメージャ観測点での多点オーロラ光学観測を実行して、オーロラトモグラフィ解析に利用可能な光学データを取得することができた。また、得られたデータを分野標準フォーマットであるCommon Data Format(CDF)に変換して公開し、容易にデータ解析できる環境を整備した。他方で、コロナ禍の影響等によってEISCAT_3Dレーダーの建設が遅れており、未だ観測開始に至っていない。EISCAT_3Dレーダー・光学ネットワーク観測を模擬したシミュレーション研究を行う等、一般化オーロラトモグラフィ観測・解析の準備は整いつつあり、EISCAT_3Dレーダーの完成、観測開始が待たれる。
これまでに取得したディスクリートオーロラの多点オーロラ画像データ、EISCAT UHFレーダーデータに一般化オーロラトモグラフィ解析ツールを適用し、オーロラ発光強度の3次元分布、降下電子フラックスのエネルギー分布の復元例を増やし、オーロラ3次元分布の時空間変動に関する新たな知見を得る。得られたオーロラの3次元分布から電離圏電気伝導度の3次元分布を導出する。地磁気ネットワーク観測から電離圏等価電流系を導出し、電離圏電気伝導度と組み合わせて3次元電流系を推定する。推定した3次元電流系を磁気圏電離圏結合過程の観点から解釈し、新たな知見を得る。北欧での多点オーロラ光学観測を継続し、EISCATレーダーとのオーロラ同時観測イベントを数多く取得する。得られたデータは、引き続きCommon Data Format(CDF)に変換して公開する。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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