研究課題/領域番号 |
21H01153
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
渡部 潤一 国立天文台, 天文情報センター, 特任教授 (50201190)
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研究分担者 |
有松 亘 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (70770808)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 太陽系 / 惑星科学 / 太陽系外縁天体 / オールトの雲 / 木星 / 高時間分解能天文学 / 天体衝突 |
研究実績の概要 |
オールトの雲に属する天体が背景の恒星を隠す掩蔽現象を検出するための観測技術の確立を目的として、既存の掩蔽観測システムのアップグレードと観測サイトの整備を実施した。2022年6月から7月にかけて沖縄県石垣市の石垣島天文台にて試験観測を実施し、得られるデータの感度およびフレームレート等において、アップグレードを実施した観測システムがオールト雲天体による恒星掩蔽現象を検出するために必要な性能に達していることを確認した。ハードウェア面の整備に加え、今後のモニタ観測で得られる予定である掩蔽観測のシミュレーションデータから、ベイズ推定手法を用いて掩蔽する天体のサイズ・距離・形状などを推定する解析プログラムの開発も進めた。これにより、今後実施予定のモニタ観測で掩蔽イベント候補が検出された場合、迅速かつ詳細に掩蔽天体の特性把握が可能となる。 上記手法の確立に加え、2022年度は前年度に取得した木星表面への小天体衝突現象の詳細な解析を実施した。木星には太陽系外縁部由来の小天体が頻繁に衝突しており、衝突閃光の観測研究は掩蔽観測同様、直接観測が不可能な太陽系小天体の特性把握に有用である。掩蔽観測システムを応用して開発したPONCOTS観測システムにより2021年10月に観測された木星表面での衝突閃光について、その解析手法を新たに開発し、閃光を司る小天体の衝突エネルギー・サイズ等を極めて高い精度で求めることに成功した。その結果、本現象が過去20年で太陽系内で観測された衝突閃光としては最大であったことが判明した。当該研究成果は、査読論文の出版(Arimatsu et al., 2022, ApJL, 933, L5)および各種学会での研究発表を行った。また当該研究成果は2022年度日本天文学会秋季年会の記者発表で公開され、国内外のメディアで取り上げられるなど一般社会に大きな反響をもたらした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度はコロナ禍によるスケジュールの変更はあったものの、観測システムのアップグレードを順調に進めており、すでに試験観測の実施も終え、観測システムが予定していた性能を発揮できていることを確認している。これは本研究の最も重要な目標である、掩蔽観測技術の確立において主幹となる要素を達成したことになり、ゆえに本研究の当初の目的が着実に進展していると評価できる。こうした掩蔽観測技術の確立に加え、2022年度は掩蔽観測技術を応用した木星表面への小天体衝突閃光現象の観測・解析手法の確立も実現した。木星への小天体衝突現象の研究は当初の研究計画にはなかったものであるが、 掩蔽観測同様、太陽系外縁部の小天体のサイズ特性に制約を得るうえで極めて重要な研究テーマであり、本研究の最終目的である太陽系外縁部の特性解明に大きく貢献する成果であるといえる。以上の点を踏まえると、本研究は当初の計画以上の成果を挙げていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き観測装置のアップグレードと観測サイトの整備を進める。2023年度中の掩蔽モニタ観測開始を目指し、2025年度までにオールト雲天体による恒星掩蔽イベントの検出の実現を目指す。こうした掩蔽観測の実施と並行し、木星および海王星等の外惑星表面での衝突閃光現象のモニタ観測も引き続き実施する。掩蔽観測と衝突閃光観測、両方の観測的アプローチによって太陽系外縁部の観測的解明を目指す。
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