研究課題/領域番号 |
21H01166
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長谷川 健 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (00574196)
|
研究分担者 |
岡田 誠 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (00250978)
大場 司 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (10272014)
井村 匠 山形大学, 理学部, 助教 (20878524)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 水蒸気噴火 / 変質鉱物 / 噴火推移予測 / ラマン分光 / 古地磁気測定 |
研究実績の概要 |
マグマを噴出しない「水蒸気噴火」は、国内でも平均して年間1件以上の頻度で発生し、御嶽山2014年噴火と草津白根山2018年噴火では、貴い人命が奪われた。 過去のデータによると、水蒸気噴火発生後の中長期的推移は、①数ヵ月以内で終息するパターン、②半年~数十年間断続的に発生するパターン、③規模の大きなマグマ噴火に移行するパターン、に分かれる。本研究では、より甚大な被害につながりうる③のパターンに焦点を当て、「最初の水蒸気噴火発生時点でマグマ噴火に移行するかどうかを物質科学的に予測すること」を目指し、その予測手法の確立を目的とする。 そのため、過去に発生した③のパターンの最初の水蒸気噴火噴出物を調査・採取し、含まれる変質鉱物などの特徴を明らかにする。国内は、阿寒・蔵王・吾妻・那須火山、海外はニュージーランドのルアペフとインドネシアのパパンダヤン火山を対象とする。従来法に加え、新手法としてラマン分光法などを導入する。 2021年度は、那須茶臼岳などの噴出物解析によって、上記の③「規模の大きなマグマ噴火に移行するパターン」、とそうではない①、②のパターンの水蒸気噴火堆積物では、含まれる鉱物種の量に違いがある可能性が指摘できた。具体的には、③のパターンの場合では、酸性条件で生成するようなカオリン鉱物・雲母粘土鉱物の含有量が、①、②のパターンのそれより多くなる傾向が認められた。来年度以降は、これらの傾向をより明確にしていくための、より詳しい分析やデータ解析を行っていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、国内の火山で調査と試料採取を行ったが、那須茶臼岳以外の噴出物の分析を十分に進めることはできなかった。特に、2021年度は、既設の分析機器の不具合などにより走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDSシステム)による細粒粒子の観察と分析を思うように進めることができなかった。このため、2021年度末に最新のSEM-EDSシステムを購入・設置した。分析の遅れは大きくないので、2022年度以降に、これまでの分析の遅れを解消する。具体的には、2021年度に得られなかった、北海道の雌阿寒岳、東吾妻山などの各噴出物のSEM-EDS分析を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、上記の③「規模の大きなマグマ噴火に移行するパターン」、とそうではない①、②のパターンの水蒸気噴火堆積物との間に、含まれる鉱物種の量に違いがある可能性が指摘できた。具体的には、③のパターンの場合では、酸性条件で生成するようなカオリン鉱物・雲母粘土鉱物の含有量が、①、②のパターンのそれより多くなる傾向が認められた。 2022年度は、この傾向を詳しく確かめるべく、諸分析を展開していく。2021年度に主に用いたX線回折装置(XRD)では、変質鉱物の有無やおおよその量比しか分からないため、SEM-EDSを用いて、より正確な変質鉱物の同定と量比の推定を行う。また、細粒粒子だけでなく、粗粒な粒子(石質岩片)についてもSEM-EDSによる観察と分析を行い、その組織や化学組成から、熱水変質が、マグマの関与の大きい高温・酸性の熱水系によるものかどうかの違いを明らかにしたい。また、新手法であるラマン分光法によって、シリカ多形の識別・同定が有効であることがおおむね確認できているので、その分析も本格的に進める。まずは、現時点で成果が得られている那須茶臼岳の噴出物にラマン分光法を適用したい。 また、可能であれば、新型コロナウィルスの感染拡大状況などに十分注意しながら、海外の一部火山を対象に、現地調査の開始を検討する。随時、文献調査などにより、関連研究や、新たな候補となり得る火山についての情報収集も行う。
|