研究課題
生物体を構成するタンパク質やその構成要素であるアミノ酸の安定同位体比はその生物の生息環境(森林か開けた草原か、等)の指標となることが知られている。本研究計画では大型草食動物などの化石・骨資料に残存するアミノ酸の安定同位体比に基づき、その生物が生存していた過去の環境を復元する方法を開発する。特に骨中に最も豊富に存在するコラーゲンや、その他の微量なタンパク質を扱い、その構成要素であるアミノ酸を分析対象とした。研究計画の2年目である本年度は、購入した液体クロマトグラフィー(LC)/分取システムの移設と設定を行い、ドラフトや窒素ガス吹付装置、凍結乾燥機、その他の関連装置類を含めた実験環境を一通り整備した。また予定していた個別アミノ酸の単離メソッドを対象試料の種別(骨・歯牙・毛髪)に確立し、作業のルーチン化を行った。また化石・骨資料に含まれるアミノ酸の定性・定量分析、およびその抽出作業を進めた。特に骨コラーゲンを構成するアミノ酸の分取メソッドを用いた単離作業を重点的に進めた。具体的には現生大型哺乳類の骨資料からのコラーゲン抽出とその後の前処理(加水分解、LCによる単離)を行った。一方で、研究分担者である高井博士およびその共同研究者らから更新世に遡る貴重な化石資料の提供を受け、その整理とサンプリング、予備的分析を継続的に進めている。これらの成果に基づき、今後は単離したアミノ酸の同位体分析と古環境復元を加速する予定である。
3: やや遅れている
研究代表者の所属機関の変更に伴い機器類の設置、移設、稼働に予定外の遅れが生じた。またコロナ禍の影響により、購入予定の物品のうち納品時期が遅れるものが複数存在した。
現在手元に保管している化石・骨資料からのアミノ酸の抽出作業を急ピッチで進める。本年度は特に単離したアミノ酸の安定同位体比を外注分析ベースで順次進めていくことに注力する。
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