研究課題
本研究は温暖期である完新世と最終間氷期の東南極氷床の変動履歴を堆積物試料とGIAモデルにより復元することを目的としている。この目的を達成するためには、湖底や陸上堆積物試料の分析による海水準記録の取得が不可欠である。今年度は、第61次日本南極地域観測隊(2019年出発2020年帰国)で採取した東南極宗谷海岸域のぬるめ池湖底堆積物試料のCT画像やコア写真、記載などの一次分析結果をデーターレポートとしてPolar Data Journalに投稿し、受理された。さらに、これらの一次結果と主要元素の変動パターンと珪藻分析により環境変動を復元し、その変動のタイミングを放射性炭素年代測定とルミネッセンス年代測定により決定した。その結果、完新世の相対的な海水準の変動に伴い、海からの隔離や氷床融解による淡水の流入によりぬるめ池の水塊構造が変化していることが判明した。この研究内容は国際誌に投稿準備中である。この成果は今後、湖底堆積物試料を用いて海水準記録を取得する際の重要な知見を提供する。また、東南極に焦点をあて、これまでの海水準変動の研究についてまとめ、今後の方針について述べた日本語のレビュー論文を執筆した。この論文により、国内の南極を含めた海水準変動の研究の裾野が広がることが期待される。令和4年度後半は、11月から2月にかけて南極において野外調査を実施し、本研究をより進捗させる最終間氷期の年代を有する可能性がある陸上・湖底・海底堆積物試料の採取に成功した。
2: おおむね順調に進展している
南極現地調査により研究に従事できる期間は減少したが、レビュー論文の公表など研究成果が得られているため。
第64次日本南極地域観測隊で採取した南極産堆積物試料の非破壊分析およびサンプリングを実施する。また、放射性炭素年代測定をパイロット試料に対して行い、おおまかな年代を決定する。測定結果が放射性炭素年代測定の測定限界を超えた場合、適宜ルミネッセンス年代測定を適用し、試料の堆積年代を決定する。堆積物試料の非破壊分析およびサンプリングが完了後、一次分析結果としてデータレポートを報告する。東南極の海水準データセットを作成し、GIAモデルと統合的に解釈することで完新世の氷床変動を制約する研究を進め、国内外の学会で発表し、国際誌に投稿する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Communications Earth & Environment
巻: 3 ページ: 1~11
10.1038/s43247-022-00599-z
地質学雑誌
巻: 128 ページ: 465~474
10.5575/geosoc.2022.0041