研究課題/領域番号 |
21H01179
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
米田 明 大阪大学, 大学院理学研究科, 招へい研究員 (10262841)
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研究分担者 |
近藤 忠 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (20252223)
寺崎 英紀 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (50374898)
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | GHz音速法 / ダイヤモンドアンビルセル / スピン転移 / 下部マントル / 地震波速度構造 |
研究実績の概要 |
本研究経費を得て、以下に示す投資・開発・作業を行うことができた。 ①本年度に大阪大学から岡山大学理学部にGHz音速装置一式を移設し、大阪大学・岡山大学が共同してGHz研究を進める体制を整えた。②高性能同軸ケーブルを購入し若干のSN比向上を実現した。③安定化トランスを導入し電源ラインからの擾乱を防ぐ手立てを講じた。④大学院生が岡山大学惑星物質研究所で(Mg,Fe)O試料を合成した。 以上の投資と技術開発の結果、鉄試料においてP波速度が32GPaで約6nsと測定された。本結果は、GHz先行グループの結果と比較しても、最高圧力・最短トラベルタイムの記録である。DACの加圧方法においてもキュレット全面試料法をMgO試料で試みた。この方法の採用により、ガスケット材からの反射波混在の懸念が解消した。MgO試料の厚みを回収後に測定し、一軸性圧縮補正を施した結果は先行研究と非常に良い一致を見た。今後は、キュレット全面試料法を標準的な手法として採用する予定である。 更に特筆すべきことはダイヤモンドアンビルキュレット径の縮小である。年度当初は600μmのキュレット径のアンビルを使用していたが、300μmを経て、現在250μmにまで縮小している。発生圧力はキュレット径に反比例し、250μmキュレット径アンビルでは80-100GPaの圧力が発生できる。つまりGHz-DAC音速法研究をマントル最深部条件まで展開できる目途がついたことになる。 またダイヤモンド背面間距離を測定するシステムも開発した。特注のXステージで39mmの上下動ストロークを確保している。このシステムに有限要素法によるダイヤモンドアンビル弾性変形シミュレーションを併用することにより、その場で試料長を的確に推定することが可能になり研究の進捗度向上に寄与すると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度において入院・手術により約三カ月現場から離れることになったが、この間も大学院生の貢献により一定の進展を果たすことができた。2021年度のコロナ禍の影響と合わせて、予定より進展が遅れているが、2023年度に向けて実際に(Mg,Fe)O試料でのスピン転移領域での弾性波速度測定をスタートできるところまで来た。 実際に測定を始めて、様々な現象と遭遇しその都度改善を進めている。担当大学院生との共同作用により経験が蓄積している段階であり、この段階を克服すれば、今後の研究展開が加速化すると実感しているところである。 これまでのGHz-DAC法の技術開発を纏めて論文投稿を行った。現時点において、GHz先行研究者からのコメントに対し改訂作業を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度中にスピン転移に関する測定を完了させることが最重要課題と認識している。その後はブリッジマナイト、ポストペロブスカイトなどが測定対象となる。出発資料となるブリッジマナイトの合成を岡山大学惑星物質研究所で行う。酸化物ケイ酸塩試料の測定は大阪大学で実施する予定である。 一方、鉄を含む試料についても鉄原子価不均化反応やマントル最下部の地震波速度異常など魅力的なテーマがあり、岡山大学をメインとして遂行していく予定である。
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