研究課題
南西太平洋地域においてプレート沈み込み期の火山活動記録が存在するニューカレドニア,パプアニューギニア,フィジーおよび海域であるトンガ弧前弧域の岩石を保有しているタスマニア大学のFalloon博士と協議,従来の共同研究を本科研費で対象とする地域に拡大して行うことに合意した.そのため,2023年4月にFalloon博士を訪問し,顕微鏡観察による分析に適した試料の選定を行い,分析候補とした試料を分取して日本に持ち帰った.これは当初調査を予定しながら,Covid-19や政情不安により調査困難となっている地域における研究を推進する上で非常に有益であった.これら試料について,40Ar/39Ar年代測定およびジルコンU-Pb測定,必要に応じて化学組成分析を実施している.これまでに,プレート沈み込み期の火山活動の年代を示すと考えられるニューカレドニアのNepoui地域のボニナイトおよびパプアニューギニアのCape Vogel地域のボニナイトについて,良好な40Ar/39Ar年代を得ることに成功した.特にCape Vogel地域については,初めて40Ar/39Ar年代測定による年代スペクトルを取得し,これまでより数百万年若い年代を得た.北西太平洋における沈み込み開始時期により近い年代値を示し,興味深い.2021年度に実施した西フィリピン海盆地域における調査航海採取試料については,分析作業を行い,西フィリピン海盆北部の海洋地殻構成岩石の形成年代や化学的特徴についての新たなデータを取得した.伊豆小笠原マリアナ弧形成につながるプレート沈み込み開始期のテクトニクス復元の検討を進めた.また比較研究としてオマーンやフィリピン等西太平洋地域のオフィオライトでの海底拡大系のマグマ活動史の研究を進めた.
2: おおむね順調に進展している
Covid-19の影響でフィールド調査が行えず,二年間繰越となり研究計画の大幅な遅延となった.このためまずは試料を保有している共同研究者から試料提供を受けることで研究を年度当初から進展させる方針で遅れの挽回をはかった.
提供を受けた試料の分析により,複数地域での分析,研究を同時にスタートさせることに成功した.次年度以降,これらの分析対象地域,他の調査予定地域でのフィールド調査と試料分析を開始させ,当初計画に近い状況にしていきたい.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
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