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2022 年度 実績報告書

西之島はカルデラ噴火に移行するのか

研究課題

研究課題/領域番号 21H01195
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人海洋研究開発機構

研究代表者

田村 芳彦  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 上席研究員(シニア) (40293336)

研究分担者 宮崎 隆  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 主任研究員 (80371722)
佐藤 智紀  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 技術スタッフ (90724740)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード安山岩 / 玄武岩 / フンガトンガーフンガハーパイ火山 / 爆発的噴火 / 大陸生成 / モホの成因 / 海洋底のでき方
研究実績の概要

西之島の2020年噴火の論文はFrontiers in Earth Scienceに受理される(2023年5月5日)。2020年の爆発的噴火はシリカ成分の小さい玄武岩マグマによって引き起こされたという常識とは異なる、新しい知見を提示している。さらに、西之島は1973年の噴火からずっと安山岩マグマを噴出していたが、2020年噴火はこれまで噴出したことのない玄武岩マグマであったこと、一方、西之島周辺海域には地球化学的に同様な組成を持つ玄武岩マグマが噴出していたことなどを明らかにした。西之島の地下のマントルではマグマの源が二箇所あり、浅いマントルで安山岩マグマ、深いマントルで玄武岩マグマを形成しているというモデルを提示した。これまでは周辺海域に噴出していた玄武岩マグマの噴出口が西之島直下に移動し、安山岩マグマと重なったことが今回の噴火の原因である。さらに、西之島と西之島南海丘のマグマの成因をミッション・イミッシブルという新しい仮説で説明した。

海洋底のモホ反射面とオマーンの地質からモホ面の実態に関する論文をIsland Arcに出版しプレス発表した(2022年9月)。中央海嶺においても低圧で水を含んだマントルが融解する可能性があり、安山岩マグマとモホ面を形成するダナイトを形成することを示した画期的な論文である。大陸の材料となる安山岩マグマと海洋底のモホ面を形成するダナイトが同じマントルの反応融解で生成する。

NIWAとの共同研究を締結し、NIWAの採取したフンガトンガーフンガハアパイ火山の岩石をJAMATECにおいて分析・解析をすすめている。西之島とフンガ火山の類似性はJAMSTEC BASEなどで解説を行った。日本地球惑星科学連合 2022年大会の地球・惑星科学トップセミナーで海の火山に関する招待講演を行った。西之島でのマグマのでき方などをNHK「ブラタモリ」で解説した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

科研費を西之島航海の流動費の一部にあて、調査航海を実施した。2022年1月にトンガのフンガ火山が爆発的噴火をおこし、フンガトンガーフンガハーパイ両島の大部分が消滅したことは火山の研究者にとっては衝撃であった。フンガ火山は西之島と同様の海洋島弧で、さらに西之島と同様、安山岩マグマを噴出する海底火山として知られていた。そのため、西之島においても同様の噴火が起こりうると考え、早急な対応をおこした。フンガ火山に関してニュージーランドのNIWAと共同研究を結び、NIWAがドレッジしたフンガ火山周辺海域の岩石をJAMSTECにおいて分析する運びとなった。よって、本科研費の実施計画を概ね順調にこなすとともに、さらに国際的な研究へと発展させている。

一年間に二本の主著論文が国際誌に受理されている。一つは、海洋モホ面の成因を明らかにした論文でIsland Arcで出版された。この論文は、太平洋の海底におけるモホ反射面の実態をレビューし、モホ反射面の反射強度と地殻の厚さや水深の関係をもとめ、オマーンオフィオライトにおける海洋底と比較し、海洋底のでき方とモホ反射面の形成に新しい知見を与えたものである。JAMSTECにおいてプレス発表をおこない、一般向けのわかりやすい解説を載せている。二つ目の論文は西之島の2020年の爆発的噴火の原因を明らかにしたものである。西之島の噴火活動における突然の変化(溶岩流出から爆発的な噴煙の形成)の原因を明らかにし、玄武岩マグマは安山岩マグマより爆発的であるという常識を塗り替えるような結果を導いた。これら二つの論文の出版は、当初の計画を上回るものである。

アウトリーチに関してもNHKの「ブラタモリ」において西之島のマグマのでき方を説明したり、JAMSTEC BASEで西之島とフンガトンガーフンガハーパイ火山の類似性を示すなど、一般向けにわかりやすい解説を行った。

今後の研究の推進方策

火山自体は数十万年の寿命をもち、その過程で、突然噴火様式が変化したり、一方、成長とともに地殻も厚くなるため、徐々に噴火様式が変化していくことも考えられる。そのため、今後はますます海底火山どうしの比較研究が重要となっていくと考えられる。海域火山、特に海洋島弧の海底火山として、地質学的に西之島とフンガトンガーフンガハーパイ火山の類似性が明らかになってきている。JAMSTECには、すでにフンガトンガーフンガハーパイ火山の岩石が到着して分析・解析も始まっている。今後はさらに岩石学・地球化学的見地から西之島とフンガ火山の比較研究を行い、爆発的な噴火の要因を明らかにして、今後の西之島の噴火の動向予測に貢献できるような知見を得たいと考えている。

西之島の動向を注視していくとともに、伊豆小笠原マリアナ弧の他の火山島や海底火山との比較研究から新たな発見が生まれる可能性もある。現在活動中の福徳岡ノ場との比較も重要であり、さらにJAMSTECには岩石アーカイブとして伊豆小笠原マリアナ弧の海底火山の岩石が多く保存されている。これらの岩石アーカイブを見直して、再分析や再評価していくことも今後重要となってくると考えている。

また、活動的な火山は接近することは勿論難しいが、さらに地下の情報を得ることは不可能である。そのため、過去の地層を積極的に研究し、海底火山の地下で起こっていることを推測していく必要もあろう。日本三景の一つである松島は、松島湾周辺に大量の軽石堆積物を残している(松島層、大塚層)。これらは1500万年前の地層であるが、現在は隆起して地下に貫入しているマグマを観察することもできる。このような陸上の地層から、カルデラ噴火の際に地下で起こっている出来事を推測していく、という手法も取り入れて、現在の海底火山の噴火に対する理解、将来の噴火に対する防災・減災的な取り組みに生かしたい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (3件)

  • [国際共同研究] NIWA(ニュージーランド)

    • 国名
      ニュージーランド
    • 外国機関名
      NIWA
  • [雑誌論文] The nature of the Moho beneath fast-spreading centers: Evidence from the Pacific plate and Oman ophiolite2022

    • 著者名/発表者名
      Tamura, Y., Rospabe, M., Fujie, G., Ohira, A., Kaneda, K., Nichols, A. R. L., Ceuleneer, G., Sato, T., Kodaira, S., Miura, S., Takazawa, E.
    • 雑誌名

      Island Arc

      巻: 31 ページ: 1, 17

    • DOI

      10.1111/iar.12460

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 海の火山に注目2022

    • 著者名/発表者名
      田村芳彦
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2022年大会
    • 招待講演
  • [学会発表] フンガ火山と小笠原弧西之島との類似性2022

    • 著者名/発表者名
      田村芳彦
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2022年大会
  • [学会発表] 中央海嶺では時折ボニナイトが噴出する:モホの成因2022

    • 著者名/発表者名
      田村芳彦
    • 学会等名
      日本火山学会2022年秋季大会
  • [備考] 「地球の大陸は海から生まれた?」 西之島の噴火から迫る、40億年前の「大陸の起源」

    • URL

      https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/explore-20221213/

  • [備考] 小笠原・西之島と“大噴火”のトンガ沖火山に共通点? 研究者が語る「火山を比べる研究」が大切なワケ

    • URL

      https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/explore-20230424/

  • [備考] 地殻–マントル境界と海洋地殻の成因に関する新しいモデルを提唱

    • URL

      https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20220921/

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公開日: 2023-12-25  

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