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2021 年度 実績報告書

全生物の共通祖先から遡る原始タンパク質のアミノ酸組成の探求

研究課題

研究課題/領域番号 21H01200
配分区分補助金
研究機関早稲田大学

研究代表者

赤沼 哲史  早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10321720)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード生命の起源 / 原始タンパク質 / プレバイオティックアミノ酸 / 触媒 / RNA結合タンパク質
研究実績の概要

RNAワールドに誕生した原始タンパク質の少数種類アミノ酸組成の可能性を、タンパク質を少数種類のアミノ酸から再構成することによって検証することが本研究の目的である。本研究期間開始前までに、祖先再構成型リボソーム蛋白質uS8であるP_Bacから系統的かつ網羅的にアミノ酸種類を減らすことによって、15種類のアミノ酸だけから再構成されたアミノ酸組成単純化型改変体P_Bac-15がRNA結合活性を示すことを明らかにした。2021年度には、P_Bac-15からさらにアミノ酸種類を減らした改変体を作製し、そのRNA結合活性を評価した。その結果、14種類のアミノ酸から構成されたP_Bac-14も、P_Bac-15と同様にRNA結合活性を示すことを明らかにした。さらに、P_Bac-14から1種類のアミノ酸を欠損させた13種類のアミノ酸から再構成した改変体をいくつか作製したところ、そのうちの一つがRNA結合活性を持つことも明らかにした。
過去の研究で復元した共通祖先型ヌクレオシドニリン酸キナーゼを12種類のアミノ酸で再構成したArc1-12は、ヌクレオシドニリン酸キナーゼ本来の触媒活性を示さないかわりに、別の反応(2分子のADPからATPとAMPを生成する反応)を触媒した。さらに、Arc1-12からリジンを欠損させても、検出可能な酵素活性が保持された。2021年度の研究では、Arc1-12を構成する12アミノ酸のうち、リジン以外のアミノ酸をどれか1種欠損させた11アミノ酸種で構成される改変体をいくつか作製した。これらの改変体の耐熱性と酵素活性を調べたところ、Arc1-12からトレオニンを欠損させたArc1-11Tも、酵素活性を保持することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

15種類のアミノ酸だけから祖先型リボソーム蛋白質uS8を再構成したP_Bac-15はヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、トレオニンが欠損しているが、RNA結合活性を示す。P_Bac-15からさらにグルタミンを欠損させたP_Bac-14を作製し、RNA結合活性をプルダウンアッセー法により測定した。その結果、P_Bac-14もRNA結合活性を持つことが明らかとなった。さらに、P_Bac-14からアスパラギン、メチオニン、ロイシンのいずれからのアミノ酸を欠損させた改変体も作成した。これらのうち、P_Bac-14からロイシンを欠損させた改変体は遠紫外円二色スペクトルの結果から2次構造を持たず、天然様構造を形成しないことが示された。一方、P_Bac-14からアスパラギンを欠損した改変体は、RNAと結合することが観察された。すなわち、13種類のアミノ酸からRNA結合活性を持つタンパク質を合成できることが分かった。
祖先型ヌクレオシドニリン酸キナーゼを12種類のアミノ酸で再構成したArc1-12は、いくつかの研究から原始環境に比較的豊富に存在したと推定され、しばしばプレバイオティックアミノ酸として参照される10種類のアミノ酸(アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、バリン)に加え、塩基性アミノ酸であるリジンとアルギニンから構成される。Arc1-12からリジン、あるいは、トレオニンを欠損した11種類のアミノ酸から再構成した改変体も触媒活性を保持することも明らかになった。すなわち、主にプレバイオティックアミノ酸で構成される11アミノ酸種類から触媒活性を持つタンパク質が合成できることが示された。
これら2つの新しい発見が得られたことから、本研究は概ね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

2021年度終了時点で、13種類のアミノ酸からリボソーム蛋白質uS8を再構成した改変体であるP_Bac-13NがRNA結合活性を持つことを明らかにした。今後は、S8-13Nからさらにアミノ酸を一種ずつ欠損させた改変体を合成し、RNA結合活性を解析する。同様にして系統的かつ網羅的に欠損させるアミノ酸を1種ずつ増やすことによって、RNA結合能を保持したS8の再構成に必要な最少アミノ酸種類を明らかにする。加えて、BLItz システムを用いて、これまでに作製した少数種類アミノ酸から再構成したuS8とRNAとの結合を定量的評価するための解析も実施する。
過去の研究で復元した共通祖先型ヌクレオシドニリン酸キナーゼを12種類のアミノ酸で再構成したArc1-12、Arc1-12からリジンを欠損させたArc1-11KとArc1-12からトレオニンを欠損させたArc1-11Tが、2分子のADPからATPとAMPを生成する反応を触媒することを示した。今後は、Arc1-11KとArc1-11Tからさらにアミノ酸を一種ずつ欠損させた改変体を合成し、酵素活性を解析する。同様にして、系統的かつ網羅的に欠損させるアミノ酸を1種ずつ増やすことによって、酵素活性を保持したタンパク質の再構成に必要な最少アミノ酸種類を明らかにし、少数種アミノ酸がどこまでありえたかを検討する。さらに、ADP以外のヌクレオシドニリン酸、すなわち、GDP、UDP、CDPが基質になるか検討する。反応測定は酵素反応前後の反応液をHPLCで解析することによっておこなう。また、2ADP→ATP+AMPだけでなく、逆反応であるATP+AMP→2ADPがArc1-12、Arc1-11K、Arc1-11Tによって触媒されるかも検討する。
本研究によって得られた成果は、論文発表および学会発表をおこない、公表する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 祖先型リボソームタンパク質S8の少数種アミノ酸による再構成2022

    • 著者名/発表者名
      趙方正、赤沼哲史
    • 学会等名
      第46回生命の起原および進化学会学術講演会
  • [学会発表] 15種類以下のアミノ酸で構築された祖先型リボソームタンパク質のRNA結合能の解析2021

    • 著者名/発表者名
      趙方正、古川龍太郎、赤沼哲史
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会

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公開日: 2023-12-25  

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