研究課題/領域番号 |
21H01223
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
小貫 哲平 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70400447)
|
研究分担者 |
清水 淳 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (40292479)
山本 武幸 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 技術職員 (40396594)
周 立波 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (90235705)
尾嶌 裕隆 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90375361)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 非破壊計測 / 超解像 / 加工変質層 / Ramanイメージング |
研究実績の概要 |
超解像Raman断層イメージング測定装置の基盤となる構成(主に顕微鏡筐体,光源、分光器,試料ステージからなる)を概ね構築することができた.試験的な測定実験の結果,素の装置構成と測定条件で300ナノメートルの解像度での計測が達成された. 測定試料としてSiCウエハやGaNウエハなどワイドバンドギャップ半導体を中心に測定条件を最適にするための研究を進め,そのほかに,環境半導体Mg2Si,強誘電体LiTaO3,エンジニアリングセラミックスAl2O3,PSZなどの材料への計測も試み,適用可能な材料範囲を拡大させた.本計測技術の応用先として電子デバイス基板材料を中心に研究を進め,そのほかに,工具などのセラミックス製品への適用において有望な用途を見出し,新たな連携研究先などの輪を広げることができた. 分析方法として,Ramanスペクトルから特徴量抽出を行うデータ処理における確かさや信頼性についての指標を開発し,得られた断層像の妥当性を保証する手法を開発した。加工変質層の状態とピーク特徴量との関係を理論的に示すために,第一原理計算によるRamanスペクトルシミュレーションの方法を確立し,任意の結晶格子状態に対する電子状態,格子振動状態を計算し,それらから変形ポテンシャル,Ramanテンソル成分を導出し,Raman散乱スペクトルを求める一連の方法を開発した.サファイア(Al2O3)をモデルとして,c軸,a軸などの主軸に対する主ひずみ,およびせん断ひずみに対する各Ramanピークのピーク位置のシフト量を求めた. これらの実績について,論文1報,解説記事1報,国際会議3報,学会発表3報の形で公開した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画に沿って研究を進め,順調に成果を上げることができている.適用材料の種類や応用先について計画以上に進展させられた成果もある.コロナ禍による部品供給不足などにも遭遇したが,装置の基盤構成を一通り構築できた.本装置によって300ナノメートルの解像度での計測まで行うことができた.微粒子状,粗研削面 セラミックスなど光散乱の影響が高い材料への計測特性を確認することも完了し,予備的な検討から,今後実施する液浸計測によって更に解像度の向上とスループット改善の目途もたてられた. しかし,試料ステージの動作安定性に問題があり,修理改善の対応が必要な状況となっている.第一原理計算によるRamanスペクトルシミュレーションを実施する体制も整備することができ,サファイアを対象としてRamanピーク位置と結晶格子ひずみとの間の定量的な関係を理論的に求めるところまで完了した. 残り2年の期間で,様々な材料・工法・加工条件で形成された加工変質層の,より高品質な断層イメージング計測データの収集と第一原理計算活用シミュレーションによる理論解析の組み合わせによって.加工変質層の生成機構についての詳細を学術的に取り扱う研究に取り掛かる目途を見出すことができた.
|
今後の研究の推進方策 |
超解像Raman断層計測の研究を基盤装置開発のフェーズの完了に向けた研究の実施と,本技術の応用研究のフェーズに向けた研究を推進していく.当年度に概ね完成した300ナノメートル位置決め精度の試料ステージの掃引を用いた測定システム(ハードウエア,ソフトウエア)の測定精度を上げる改善と,当年度まで進めてきた予備的な検討の結果を基に当計測装置を用いた応用研究を推進する. 基盤装置開発フェーズ: ・試料ステージの位置決め精度安定性に課題が見られるため,除振対策やクリープ対策などにより改善させる.本計測システムの定量的な性能評価を実施し,大気中計測における空間解像度300ナノメートルを実証する. ・液浸超解像断層Raman計測の計測体制を確立する.液浸で空間解像度100ナノメートル以下を達成する.スループット改善による測定速度2倍以上の改善を達成する. ・第一原理計算Ramanスペクトルシミュレーションによる各研究対象の材料表面の加工変質層定量分析のためのデータ収集を行う.ピーク幅から結晶格子エントロピーの値の推定,ピーク位置から弾性応力(ひずみ)成分の値を推定する. ・複屈折位相遅延計測,断面TEM観測、など他の計測方法との比較から本計測法の信頼性の確保を進める検討を行う. 応用研究フェーズ: ・広バンドギャップ半導体(SiC、GaN)の研削加工条件探索に応用する.損傷発生機構の解明など学術研究に応用する. ・狭バンドギャップ半導体(Si、Mg2Si)の加工変質層評価への応用を試みる. ・工具等の工業製品の傷診断や破損予兆検出への応用を行う.
|