研究課題/領域番号 |
21H01318
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
本間 尚樹 岩手大学, 理工学部, 教授 (70500718)
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研究分担者 |
村田 健太郎 岩手大学, 理工学部, 助教 (20848030)
小林 宏一郎 岩手大学, 理工学部, 教授 (60277233)
岩井 守生 岩手大学, 理工学部, 助教 (60825876)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マイクロ波 / バイタルセンシング |
研究実績の概要 |
本研究では,マイクロ波を用いた非接触・非侵襲なヒトのバイタルセンシング技術において,MIMO (Multiple-Input Multiple-Output) による空間軸の拡張と,時間信号処理による時間軸の拡張を組み合わせによって,感度を究極的に拡張した新しいセンシング手法を確立することを目的としている. 本年度は大規模アレー装置の開発を中心的に行う.送信32ポート,受信32ポートのMIMOレーダ装置を開発した.開発項目は,アレーアンテナの試作,ダウンコンバータ(受信機),そしてベースバンド信号処理部(データ取得装置および受信ソフトウェア) など多岐に渡るが,今年度は中でもアレーアンテナの試作,ベースバンド信号処理部の開発について取り組んでいる.なお,それ以外の部分は前年度までに開発を完了している. 並行して,このような大規模アレーアンテナを用いたMIMOレーダに適した信号処理法についても検討を進めた.大規模アレーによって形成される狭ビーム特性を活かした人物トラッキング法について検討を行った.特に人体成分は既知信号とは異なり不規則な性質を有するためブラインド処理である必要がある.人体は呼吸や心拍と言った体表面が微小に前後すると良いった特徴に着目し,本来観測されるベースバンド信号は円弧状となるはずが,低マイクロ波では円弧が微小となり,直線状の形状となることに着目した.そのような変動のみを取り出しそれ以外の成分を除去する新しい手法を開発しバイタル成分を抽出する方法を確立した. 以上のように今年度は拡張した時空間信号処理によるヒトセンシングを実現するためのハードウェア・ソフトウェアの両方について取り組み,特にハードウェアは世界最高素子数のバイタルサインレーダを実現するという成果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,マイクロ波による空間軸と時間軸を拡張した高感度ヒトセンシング手法について取り組んでおり,初年度はRFフロントエンドの開発及び基礎アルゴリズムの確立,二年目は大規模アレーアンテナを含めたMIMOレーダ装置の開発完了を目指していた.2022年度までに主たる装置の構築を完了する予定であったが,昨今の半導体不足および,世界情勢の不安定化により,各種デバイスの調達が大幅に遅延し三年目である2023年度まで時間を要する見込みとなった.一方,その間に並行して各種アルゴリズムの開発に取り組んでおり,装置以外の部分については2022年度の目標の検討を実施することができており,概ねキャッチアップできている. 今回開発中の装置構成は,本研究で取り組む様々な課題への応用を見据えたものとなっており,送受信部は独立であり,モノスタティック/バイスタティックの両方に対応できる装置としている.さらに,アンテナはサブアレー分割方式としたことで,サブアレーを様々な配置に置換える,あるいはサブアレー自体を異なる構成のものと置換えることによって,さまざまな形状のアレーアンテナを実現できる.このように目的に応じて柔軟に再構成可能な大規模アレーMIMOレーダを開発中である. 今年度は開発した装置に搭載するアルゴリズムを開発し,基礎的な評価を行うことができた.翌年度に実施予定である,本格的な超高精度ヒト検出に向けて検討を進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
当年度はハードウェアの中でも遅延しているベースバンド受信装置以外の部分の実現し,空間的自由度を究極的に高めた大規模アレーを用いたMIMOレーダに向けて開発を前身することができた.翌年度は,全てそろったデバイスを用いてハードとソフトを統合し,ペースアップして本研究計画遂行に向けて検討を進める. 以下課題項目ごとに具体的な推進方策をまとめる. 課題A 血圧推定:血圧推定の基礎となる心拍推定の高精度化について検討を進める. リファレンスとなる血圧測定系とMIMOレーダの正確な同期が取れるよう,ハード・ソフトウェア両面で開発を進め,信頼性の高いデータ取得を目指すとともに,血圧推定精度の向上を図る. 課題B 生体認証:拡張したMIMOレーダ装置を用いて,様々な角度から人体を観測し,特にヒトを拘束せずに識別可能な手法を見出す.現在は人体が立位状態では上下方向に長いことに着目し,垂直アレーを用いた方法について検討をしている.これを発展させ,高いレベルで生体認証を実現する方法を確立する. 課題C 行動予知:行動予知については,前年度に予想以上に検討が進展したため,概ね当初計画は遂行することができている.少ないアレー数であっても時間軸を利用することで高精度な測位を実現できることが明らかになったため,今後は本手法の応用技術について検討を進めたい.
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