研究課題/領域番号 |
21H01327
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
貴家 仁志 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (40157110)
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研究分担者 |
塩田 さやか 東京都立大学, システムデザイン研究科, 助教 (90705039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 画像暗号化 / プライバシー保護 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
研究初年度である本年度は、暗号化データを深層学習に適用することを前提にして、画像、特徴マップに代表される学習時の画像の特徴量及び学習済みモデルの暗号化の方法と、暗号化法の評価、暗号化されたそれらを用いた展開について今後の研究方向性の確認の観点から広く研究を行った。学習可能な暗号化の研究の今後の展開において重要となる、暗号化データ使用によるモデル性能の影響、各種攻撃法への耐性、暗号化鍵の管理及び更新、深層学習に基づく種々のモデルへの適用制限、学習可能暗号化法の応用分野の可能性について有益な知見を得ることができた。 特に、以下の点を理論及び実験の両面から明らかにすることができ、その成果をまとめることができた。(a) 画像分類モデルに有効な画像暗号化法は、他のタスク(物体検出、セグメンテーションなど)に対して有効とは限らないこと、(b) 深層学習における暗号化の有用性は、プライバシー保護に限らず、モデルの知的所有権の保護や不正アクセスの制御などにもあること、(c) 視覚情報を持たない暗号化画像を、暗号化を復号することなしに類似画像検索するための条件と方法。これらの成果の一部を、Q1ジャーナルを含む2編の学術論文及び5編の国際会議論文として出版した。同時に、本年度の検討によって新たに解決すべき課題を明らかになり、かつ進展を続けている深層学習の動向調査を行った。本年度の成果によって、本研究課題の今度の方向性と課題を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の一部を2編の学術論文、5編の国際会議論文として掲載することができ、研究は順調に進んでいる。画像分類タスク以外にも、深層学習モデルの応用は多岐に渡る。しかし、暗号化画像を用いるモデル学習法の多くは、その応用が画像分類タスクに限られることが明らかになった。そのため、モデル学習時の特徴マップの暗号化や、学習済モデルを直接暗号化する方法を検討し、その有効性を、物体検出及びセマンテックセグメンテーションのタスクにおいて確認することができた。さらに、これらの暗号化法は、画像データの視覚情報に加え、モデル保護やモデルへの不正アクセスへも有効であることを実験において確認した。今年度の成果によって、高い信頼性を持つ深層学習法の構築にための、秘密鍵を用いた暗号化法の適用という着想の正当性を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
深層学習への秘密鍵を用いた暗号化法の適用において、その有用性を確認できたと同時に、改善すべき課題も明らかになった。また、深層学習の進展に伴い、検討すべき課題も広がっている。今後の研究を、それらを考慮して進める予定である。具体的には、以下の3点を中心に研究を進める。
(a) 暗号化使用によるモデル性能の低下回避:暗号化の使用は、モデル本来の性能を一般に低下させてしまう。その暗号化の影響を回避する方法を研究する。 (b) 秘密鍵の更新法:秘密鍵を用いた暗号化法では、鍵管理の観点から定期的に鍵を更新することが望まれる。しかし、現在の深層学習のための暗号化法では、鍵の更新度にモデル学習をすべてやり直す必要があり、おおきな計算コストが必要となる。この課題の解決を目指す。 (c)適用可能タスクの拡張:画像分類タスクに加え、物体検出及びセマンテックセグメンテーションのタスクにおいて、本暗号化法の有効性を確認した。しかし、深層学習はより多くのタスクに展開されており、それらでの有効性は未検討である。急速に発展し、今後さらに重要性を増すことが期待される敵対的生成ネットワーク(GAN)などのモデルに対して有効な暗号化を検討する。
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