研究課題/領域番号 |
21H01346
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
Widiatmo Januari 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (30371024)
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研究分担者 |
中野 享 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (20357643)
三澤 哲郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (40635819)
斉藤 郁彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (50710620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 熱力学温度測定 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで熱力学温度を高精度に測定できる音響気体温度計を開発し貢献してきたが、測定範囲を拡張し高温用音響気体温度計を構築する。2021年度は以下の技術開発および測定を行った。 拡張した温度範囲で使用できる音響気体温度計の擬球形共鳴器を新規に設計・開発した。擬球形とは中心からx-y-z軸方向の半径が若干異なる形状を意味し、真球では重なってしまう電磁波共振モードを3つに分離することで、高精度な共鳴周波数測定が可能となる。上記新規設計・開発した共鳴器については、このモード分離を確認した。本音響気体温度計はコンデンサー型マイクロフォーンをトランスミッタおよびレシーバとした音響共鳴を実現し音速を測定して熱力学温度を決定するものである。拡張した温度範囲で音響共鳴が実現できるために、マイクロフォーンを共鳴器本体と分離し、共鳴器との間に音波を送信できるダクトの導入を検討した。本年度は共鳴器とダクトとが接続できる音響プラグを開発した。一方、共鳴器の有効半径の測定に電磁波共振が適用されており、そのために送信用および受信用アンテナを導入した。マイクロフォーンと同様に、高温範囲での使用のために、アンテナ用の電磁波プラグを開発した。拡張した温度範囲での高精度な温度測定のために標準白金抵抗温度計(SPRT)を1990年国際温度目盛(ITS-90)に従い、幾つかの温度定点で校正する必要がある。本年度はインジウムの凝固点(150℃)までの範囲として、使用するSPRTを水の三重点とインジウムの凝固点での校正を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要に対し、以下の技術開発および測定を行った。 1. 公称内容積が0.003 m3(3 L)の擬球形の共鳴器(以降QSR-3と呼ぶ)を新規設計・製作した。本共鳴器は、高温域での変形の影響を考慮して、その材質をステンレス鋼系の材料とした。音響共鳴および電磁波共振の特性を高めるために、内面の表面粗さをRa指標で20 nm以下まで平滑化した。新規設計・開発したアンテナプラグに送信用アンテナおよび受信用アンテナを当共鳴器に設置し、電磁波共振を実現し、共振周波数を測定した。本共振周波数測定から、電磁波共振モードが3つのモードに分離していることが分かり、共鳴器は擬球形であることの確認ができた。この結果により、共鳴器の有効半径の高精度な測定を準備することができた。 2. 高温範囲での使用のために、ダクトを通って共鳴器にマイクロフォーンを接続できるように音響プラグを新規設計・製作した。高い温度範囲での使用に先駆けて、使用対象のマイクロフォーンを用いて温度が47 ℃付近で、圧力が650 kPaから80 kPaまでの範囲において音響測定を試みた。その結果、当温度・圧力では本マイクロフォーンが正常に使用可能であることを確認することができた。 3. インジウム凝固点以下の範囲において、温度制御および測定のために本研究はカプセル型標準白金抵抗温度計(cSPRT)を使用している。このcSPRTのインジウム凝固点での校正のために、インジウム点実現装置およびcSPRTのジグを製作した。本年度は2本のcSPRTを校正することができ、新規のQSR-3への応用を準備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
【QSR-3用の圧力容器の開発】QSR-3はこれまで開発してきた共鳴器より大きさが異なり、従来の公称内容積0.001 m3の共鳴器に使用した容器(圧力容器)とは別に新規の圧力容器を設計・製作する。また、これまでは液体恒温槽を用いて共鳴器の温度を安定化してきたが、高温範囲では導入できないため、QSR-3のための電気炉を新規に開発する。 【分離型プラグの開発】高温範囲で使用できる音響用分離型プラグおよび電磁波用分離型プラグを考案し設計・製作を開始する。 【キャプセル型標準白金抵抗温度計の校正】熱力学温度の広範囲の測定のために、使用のcSPRTをインジウムの凝固点で校正する。既存のcSPRTの経年変化や安定性を確認する。
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