研究課題/領域番号 |
21H01351
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 健治 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293903)
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研究分担者 |
丸田 一郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20625511)
佐藤 訓志 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (60533643)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 受動性に基づく制御 / スライディングモード制御 / 速度ポテンシャルエネルギー整形法 / 宇宙機制御 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者らのグループで現在開発を進めている2つの制御手法である速度ポテンシャルエネルギー整形法と機械学習に基づく制御系設計法の理論的な手法の構築、およびその宇宙機制御への応用に関するものである。宇宙機制御の問題は、宇宙機の位置や姿勢をフィードバック制御する「姿勢制御」問題と、宇宙機の軌道を計画する「軌道計画」問題に大別される。姿勢制御に関しては、近年国際共同研究として開発した速度ポテンシャルエネルギー整形法を基礎として、受動性に基づく制御手法とスライディングモード手法を融合させた設計自由度の高いロバスト制御手法の開発を行っている。2022年度は、電気システムを含む幅広い物理システムへと適用可能な対象のクラスを拡張することを目標にして、これを達成する成果を得た。軌道計画に関しては、最適化・機械学習の様々な分野のツールを導入して、より良い軌道を効率よく求める手法の開発を目指している。特に今年度は確率最適化の考え方をニュートン法と組み合わせた方法のプロトタイプを提案し、大域的な解の探索に有効であることを確認した。 またこの年度では、上記の制御則の性能を実証する実験機の導入も計画していた。この目的のために、6自由度のロボットマニピュレータを選定し、実験機・架台・制御装置・安全装置など一式の設計を導入を目指したが、市場の部品不足の影響もあり年度内に完了することができず、2023年度に延長してこの目標を遂行した。2023年には実験のための準備を行い、2024年度に実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、速度ポテンシャルエネルギー整形法と機械学習に基づく制御系設計法の理論的な手法の構築、およびその宇宙機制御へ応用することにある。 特に宇宙機の位置や姿勢をフィードバック制御する「姿勢制御」問題と、宇宙機の軌道を計画する「軌道計画」問題の2つの問題に対して制御手法を開発してい る。今年度はこの問題に対し、理論的なアルゴリズムの開発と性能検証のための実験テストベッドの開発を行なった。新規アルゴリズムに関しては、速度ポテンシャルエネルギー整形法に基づく、積分スライディングモード制御則の開発、およびニュートン法に基づくL1最適制御手法に信頼領域法を組み合わせ、より実用的なアルゴリズムを導いた。 制御性能実証のための実験機の開発としては、6自由度のロボットマニピュレータを購入し、制御性能を評価できるように既存の制御機構を撤去し、独自の制御装置を組み合わせた実験検証テストベッドを開発した。ただし、この実験機の納入に時間がかかったこと、およいび独自の制御装置を新たに設計するのに時間を要したことから、実験機の開発には時間を要し、当該物品の納入には当初予定の2022年度から約1年遅れた。このことから、研究進捗としてはやや遅れているが、実験機を使った制御性能検証は予定通り行なえると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は新しい制御理論の開発とその宇宙機制御への応用であるが、実験機の整備に2023年度まで時間がかかってしまったため、残すところあと1年の研究機関となった。今後、理論的な研究としてはこれまでに得られた新しい制御アルゴリズムの整理・体系化を行いたい。また実用的な研究としては、実問題への適用、および2023年度に導入した実験機を用いた実験検証を行いたい。 理論的な研究については、速度ポテンシャルエネルギー成形法に基づくスライディングモード制御の一連の研究を体系化する。これまでは、特定の制御対象に対する特定の性能をもつスライディングモード制御を複数提案してきており、いわばプロトタイプの制御則を提案するものであった。次年度は、この方法がどのクラスの制御対象に対して適用可能であるのかを明確化し、かつ一般クラスを対象とした性能保証を行いたい。また最適軌道軌道計画法については、劣決定系のニュートン法に基づく一連の提案手法を整理し、信頼領域法や確率最適化と組み合わせ、アルゴリズムの安定性や収束性能を保証した汎用性のあるアルゴリズムとしてまとめたい。 実用的な研究については、共同研究者の佐藤教授とともに、宇宙機のランデブー制御に本手法を応用したい。ランデブー制御では複数の宇宙機が共同でミッションを達成することになるが、複数機からなる全体のシステムの性能を保証するために、スライディングモード制御が役立つと考えている。また今年度導入した6自由度マニピュレータを通して、提案するスライディングモード制御の性能検証を行いたい。特に提案法の利点として、従来は不連続なフィードバックを有しており滑らかな制御が不得意であったスライディングモード制御を連続な制御とシームレスに切り替えできる点が挙げられるが、この性能を達成できるかどうかを検証したいと考えている。
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