研究課題/領域番号 |
21H01365
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
久米 徹二 岐阜大学, 工学部, 教授 (30293541)
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研究分担者 |
福山 敦彦 宮崎大学, 工学部, 教授 (10264368)
鵜殿 治彦 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (10282279)
大橋 史隆 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20613087)
今井 基晴 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 上席研究員 (90354159)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SiGeクラスレート薄膜 |
研究実績の概要 |
Siリッチ組成クラスレート薄膜作製のための新しい装置開発を進め、真空下におけるNa蒸気と600℃の基板(Siまたは非晶質Si膜)を反応させ、それに続く400℃付近での熱処理を可能にした。特にNaの真空蒸着と背面からIRランプによる加熱を同時に行い、蒸着後加熱を続けながらシャッターにより試料を小さな空間に封じることを可能にしているのが特徴である。構築した装置により、いくつかの条件で試料の作製を試みた結果、部分的にSiクラスレートの合成を確認している。 並行して、既存のクラスレート作製装置によりGeリッチ組成の試料作製を行い、XRD、ラマン散乱、SEMにより構造・組成の評価を行うと共に、可視紫外吸収分光、赤外吸収分光、電気伝導度測定により光物性、電子物性の解明を行った。その結果、Si含有率の増加に伴う吸収端の高エネルギーシフトがはっきりと観測され、Si/Ge組成によるバンドギャップ制御の可能性を示した。電気伝導度の温度依存性からは、残存するNaの量に応じて金属的から半導体的な性質へと変遷する様子が観測され、Naの存在がクラスレートの電子物性に大きな影響を与えていることが明らかになった。 GeクラスレートへのAlの不純物ドーピングについて、引き続き試料作製と評価を行った。XPS、SEM-EDXの分析より、Alが試料表面にAl2O3として多く析出し、これが電気伝導性に影響を及ぼしていることが示唆された。また、クラスレートの結晶子サイズはAlの添加により減少しており、結晶化プロセスにAlが影響を与えていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、Siリッチクラスレート作製装置を立ち上げ、いくつかの条件で試料作製を試みることができた。今後試料作製条件を最適化し、良質なSiリッチクラスレートの合成が可能になると期待できる。Geリッチクラスレートの物性解明については、予想通りNa量の物性への大きな寄与が明らかになった。Geクラスレートへの不純物ドーピングについては、Alの添加による結晶子への影響などが見られており、今後その電子物性を明らかにすると共に、他のドーパントを試す予定である。 以上のように、並行して行っているテーマのいずれについても進捗が見られており、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに構築した試料作製装置により、Siリッチ組成クラスレート薄膜の作製を確立することを目指す。具体的には、Naの真空蒸着と赤外ランプ加熱による、Na蒸気と原料(Si基板または非晶質Si薄膜)の反応、それに続く真空下での比較的低温での熱処理に関して、それぞれのプロセスの温度・時間をパラメータ―として、良質なクラスレート薄膜を得るための最適条件を探る。 Geリッチ組成のクラスレート試料作製は、引き続き既存のクラスレート作製装置により行う。今年度は、残留Naを更に減少させ良質な半導体特性を得ることおよび不純物ドープによるP型伝導の実現に注力する。Na量の減少には、真空熱処理の他にイオン液体処理なども試す。不純物ドープに関しては、出発材料(Ge薄膜)作製時に、各種ドーパント(Al、P、Gaなど)を同時スパッタリング法により製膜する。これを原料に、Geクラスレートを作製し、ノンドープの試料と物性データを比較し、ドーピングの効果を確かめる。またP型、N型の出発材料(Ge基板)を用いても試料作製を行う。さらにショットキーデバイス、PN接合デバイスの試作および評価を行う。 上記において作製された試料は随時、構造・組成・欠陥に関する評価を行うと共に、光物性、電子物性の解明を行う。近赤外・可視・紫外領域の透過率測定から吸収係数、バンドギャップ(光学ギャップ)を評価するとともに、電気伝導度の温度依存性により活性化エネルギーを算出し、光学ギャップとの対応を議論する。また、各種光学測定により光吸収キャリアの再結合過程、ホール効果測定により、不純物準位、キャリア密度、移動度、伝導機構などの重要な物性を明らかにする。得られる試料が不均一で、広い面積の膜が得られない場合には、微細加工を施し、微小部分の評価を行う。
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