研究実績の概要 |
前年度までにpolyethyleneimine (PEI)を電子注入層として用いると,ワイドギャップ両キャリア輸送性有機半導体である9,10-diphenylanthracene (DPA)に電子を効率よく注入できることを確認した。そこで,今年度はn-type Si wafer/SiO2 (300 nm treated by OTS)/Cr (5 nm)/Ag, oxidized Ag (AgOx, 40 nm)/PEI as an electron injection layer/DPA (70 nm) の構造を持つOFETを作製し,電気特性を評価した. しかし,本研究で作製した素子では出力電流が小さく動作が確認されなかった.この原因を探求するために,PEI層の膜厚測定や表面観察を行ったところ,スピンコート法ではPEI溶液がうまく広がらず,電極上だけでなくチャネル上にも成膜されてしまった結果,チャネルが形成されず動作しなかったと推察された. そこで,今年度はスピンコート法よりも薄く成膜でき,塗布時間で膜厚の制御が可能なミストコート法を用いてPEI薄膜を成膜し,電子注入性の評価を行った。はじめに,ガラス基板 (20 nm × 20 nm)上に75 wt%のメタノールを溶媒として用い,0.1 wt%の濃度まで希釈したPEI水溶液を噴霧器で塗布し,大気中にて150℃で乾燥させた.塗布時間を変えていくつかの試料を作製後,微細形状測定器で膜厚の測定を行った.さらに,AgOx電極上に塗布時間を変えながらPEI薄膜を成膜し,塗布時間と表面のイオン化ポテンシャルの関係も明らかにした。 一方で,電極の酸化プロセスにおけるUVランプの輻射熱の影響を回避するために,エキシマUVランプを用いた電極酸化装置の設計,構築も行った。
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