研究課題/領域番号 |
21H01381
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
弓仲 康史 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30272272)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高速インタフェース / 多値情報処理 / 高速信号伝送 / 等化回路 / 情報通信工学 |
研究実績の概要 |
現在、0,1で情報を表現する2値論理に基づく集積回路の極限微細化および素子構造の革新によりトランジスタの高速化が実現される一方、伝送データ量増大に伴う配線の激増と伝送波形の劣化によるデータ速度制限がVLSIシステム全体の性能を律速しつつある。これに対し本研究では、無線通信で用いられている高度な符号化および信号処理技術をVLSIシステムの有線データ伝送の高性能化に適用し、高速高効率な情報伝送を可能とする配線主体の集積回路システムの設計理論から回路実装・評価に至る技術体系の構築を目的とする。具体的には、次世代高速データ伝送のIEEE規格で採用された4値符号化およびディジタル信号処理アシストに基づく波形整形・劣化波形評価技術を駆使し、「多値情報処理技術が拓くデバイスを活かす新概念の高速信号伝送システムの応用展開」を検討する。
令和3年度は、400GEthernetなどの次世代高速データ通信規格で採用された4値符号化に基づき、「4値信号特有の送信イコライズ技術の検討とその評価」ならびに「受信信号の2次元マッピングによる4値信号伝送品質の評価手法の提案」を行った。特に、従来の4値送信イコライザの課題であった遅延素子の削減を目的とし、符号遷移情報に着目した新構成の4値イコライズ技術の提案、および受信シンボルの2次元マッピングによる4値伝送波形品質評価とイコライズ能力の可視化手法を新規に提案した。これらの技術をシミュレーションおよび実測で評価を行うと共に、今後の課題等を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、以下のような研究成果を得ると共に、論文2件の採択ならびに本分野において最も権威のあるIEEEの国際会議であるISMVL(多値論理国際シンポジウム)における発表および次年度も採択されるなど、計画通りの進捗状況となっている
[1. 4値信号特有の送信イコライズ技術の検討とその評価]4値高速信号伝送においては、2値信号とは異なる波形等化技術が要求される。本研究では、4値信号の遅延素子が実現困難であることを考慮し、4値信号のMSBとLSBの立上り、立下りエッジの変化点に着目し波形強調量を決定する新構成の送信イコライズ技術の検討を行った。本手法は、符号遷移量に比例した波形強調が可能であるため、4値信号の波形等化に特に有効であることを明らかにすると共に、提案したイコライザのパラメータの設定方法を検討した。
[2. 受信信号の2次元マッピングによる4値信号伝送品質の評価手法の提案] 高速信号伝送においては、実装後の環境変動に応じた波形整形回路のパラメータの動的調整が必要となり、受信端にて伝送波形の歪みの影響をモニタリングする技術が要求される。これに対し、受信波形をシンボルレートに合わせてサンプリングし、現在のシンボル値をy軸、1つ前のシンボル値をx軸として2次元マッピングする伝送波形品質評価手法を提案した。波形劣化のない理想的な4値信号伝送の場合、16個の点分布となる。これに対し、シンボルレートが高速になると、符号間干渉の影響でサンプリング点でのシンボル値が理想からずれるため、2次元マッピングの各点群の傾きが増加する。本提案の2次元マッピングより、伝送路の符号間干渉やジッタによって劣化した伝送品質の評価および波形等化回路の効果を視覚的に評価可能であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
符号化・信号処理技術に基づく高速高効率有線信号伝送の要素技術の理論的考察とそのハードウェア実装・評価技術を引き続き検討する。令和4年度は令和3年度の研究成果を深化させ、以下の2テーマの研究を重点的に推進する。
[1. 多値信号等化技術の検討とそのシミュレーションおよび実測による評価] 4値信号特有の遷移パターンに着目した各種イコライズ回路構成の検討を行う。(1) 従来のFFEタイプとは異なる原理の符号遷移情報を利用した送信イコライザの検討をさらに推進し、多値信号の遅延素子の削減を図る。特に、2ビット前の符号遷移まで考慮した高次イコライズ回路の構成を検討する。(2) 波形整形の時間軸方向の改善を目的とし、サンプリング周波数を2倍とした分数遅延FFEに対し、等価変換に基づく動作速度を抑制可能な回路構成と係数設定手法を検討する。任意波形発生器を用いてFFE送信波形をエミュレートし、各種伝送路における実証評価を行う。
[2. 受信信号品質の統計的評価手法による波形等化回路のパラメータの動的調整技術] 受信端信号波形を重ね合わせたEyeパターンによる伝送信号品質評価が一般に用いられるが、4値伝送では4シンボルの検出と評価が要求され回路が複雑化する。これに対し、現在と1シンボル前の4値受信シンボル値を2次元マッピングすることで符号間干渉およびイコライズ能力を可視化する新たな評価手法の検討をさらに推進する。具体的には、2シンボル前の情報を用いた3次元マッピングへの拡張を検討し、シミュレーションおよび原理実験により、4値信号の伝送品質の統計的評価とイコライザ係数の動的最適化手法への適用を目標とする。
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