研究課題
本研究では,磁場に依存したスピン流からのテラヘルツ(THz)波放射を利用し,従来よりも飛躍的に高い空間分解能を有する渦電流探傷法を開発することを目的としている。そのために,① 金属スピントロニック素子からのTHz波放射を高効率化するとともに,②励磁コイル,スピントロニック素子,THz波検出素子を一体化した渦電流探傷プローブを開発する。また,③THz波放射信号から欠陥を判別するためのDeep Learningによるアルゴリズムと信号処理システムの開発に取り組む。本年度は以下の研究を実施した。(1)Fe/Ptヘテロ金属薄膜スピントロニック素子に対して,アンテナ部の金属(Pt)膜厚が100nm, 200nm, 300nmのものを試作し、比較した。その結果からFe/Ptヘテロ金属薄膜スピントロニック素子の場合において、アンテナ金属の最適な膜厚は200 nm付近にあることが分かった。(2)アンテナ電極材としてPt(白金)よりも高い伝導率を持つAu(金)を用いて、スピントロニックアンテナ素子の製作を試みが、製作した素子からTHz波放射が観測されなかった。これはAuと下地のFeとの相性が悪いせいと考えられた。(3)スピントロニック素子からのテラヘルツ波放射の磁場飽和特性を定量評価し、THz波放射強度の精密な磁場制御の指針が得られた。(4)金属スピントロニック素子からのTHz波の検出には,磁場の影響を受ける電気光学結晶に代わり,光伝導アンテナ素子を検出器として用い,金属スピントロニック素子と光伝導アンテナ素子を一体化した磁場プローブを試作し、その特性を評価した。
3: やや遅れている
金属スピントロニック素子と光伝導アンテナ素子を一体化した磁場プローブを試作し、その動作を実証することができたが、その感度と空間分解能が十分でない。そのため最終目標である高空間分解の磁場イメージングを実証するまでに至っていない。
磁場プローブを改良し、磁場の高空間分解イメージングの実証を目指す。またTHz波放射信号から欠陥を判別するためのDeep Learningによるアルゴリズムと信号処理システムの開発に取り組む。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 12件、 招待講演 8件)
Journal of Materials Science: Materials in Electronics
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