研究課題/領域番号 |
21H01412
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 貴信 北海道大学, 農学研究院, 教授 (00279514)
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研究分担者 |
後藤 文彦 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (10261596)
宮内 輝久 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林産試験場, 主査 (20446339)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | CLT / 防腐処理 / 防護柵 |
研究実績の概要 |
本研究では、小規模な既設鋼橋の床版取替工事におけるCLT床版の実用化を目的として、①防腐処理方法の開発、②防護柵設置方法の検討、③橋梁の補修設計の提案を主たるテーマに研究を進めるている。当該年度の主な研究成果を以下に示す。 防腐処理方法の開発では、プレインサイジング処理したCLTにクレオソート油およびナフテン酸銅の油性防腐薬剤を加圧注入した小型試験体を用いて薬剤の浸潤度を評価した。これらの試験では、スギCLT、トドマツCLTおよびカラマツCLTを対象に行ったが、スギとトドマツでは表層10㎜、外層・内層木口面で100%の浸潤度が得られた。一方、カラマツの浸潤度はこれらよりも低く、バラツキが大きかった。難注入性のカラマツではポリウレア系塗料によるラッピング処理についても検討し、耐水性やアスファルト舗装時の耐熱性の評価を行った。これらの研究成果は北海道内の林道において、建設後40年を経過した鋼桁橋の床版取替工事において採用され、令和5年3月に完成した。令和5年度には完成した橋梁を対象に車両載荷試験を行い、CLT床版の性能を評価する計画である。 ②防護柵設置方法の検討では、経済性や橋梁の規模を考慮して、より簡便なガードレールを防護柵として設置する方法を検討した。具体的にはR3年度に実施した防護柵支柱の水平載荷試験結果をFEM(有限要素法)解析の結果と比較して実用化に向けて改良案の検討を研究分担者の後藤が中心に行った。 ③橋梁の補修設計の提案では、床版取替の対象となる既設の橋梁を想定し、補修設計を行うための設計資料の整備を目指し、2級林道用のCLT床版の試設計を行い、CLT床版用の設計式を導く方法を提案した。これらの設計法の検証は前述した令和5年度に計画している車両載荷試験の結果を用いて検証を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、プレインサイジング処理したCLTにクレオソート油およびナフテン酸銅の油性防腐薬剤を加圧注入することで、高い耐久性を有するCLT床版の実用化を検討しているが、薬剤の浸潤度や加圧処理が接着性能に及ぼす影響などを実大レベルのCLTで評価した結果、小型試験体の結果から想定したよりも高い注入量を得ることができ、想定以上の成果が得られている。一方、難注入性のカラマツCLTについては、ラッピングによる物理的な防水処理も検討しており、吸水試験による吸水率や寸法変化を高い耐水性を確認した。 これらの成果は道内の林道橋の床版取替工事に採用され、実用レベルの検討ができており想定以上に成果が得られた。 当該工事において、防護柵の設置は行われなかったため、当該年度は防護柵のテーマについては解析的な評価となったが、来年度には解析結果を踏まえた新しい防護柵構造の提案と実大試験体を対象とした強度試験による評価を計画している。 以上を総合的に判断して、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に研究計画を遂行できたことで十分な成果が得られており、それらは北海道内の林道橋を対象とした床版取替え工事において採用されるに至っている。今後はこうした実用化事例を対象に供用後の橋梁におけるCLT床版の性能評価を目的とした載荷試験を実施することで、設計法の妥当性の検証やFEM解析との比較など様々なデータ収集を行う予定である。 本研究の成果はこれまでと同様に土木学会の全国大会や土木学会論文集で情報発信を行う計画である。また、土木学会木材工学委員会・木橋の新技術に関する研究小委員会において情報共有を行い、同委員会において橋梁補修工事におけるCLT床版のマニュアル化の検討を行う計画である。 本研究の成果により、CLT床版に関する問い合わせや関心が増していることから、引き続き研究を推進し、積極的に研究成果の公表を行うことで、研究の達成度を上げていく計画である。
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