研究課題
当初計画通り、農業干ばつ予測の不確実性定量化手法の開発に取り組んだ。3種類の異なる衛星観測を用い、陸域モデルの6つの未知パラメータの最適化とその不確実性推定に成功した。異なる種類の衛星観測を用いることで、水・熱・生態系をバランスよく正確に数値計算することが可能となった。この研究は将来的に農業干ばつ危険度予測を決定論的な一本の予測ではなくて、予測システムに内在する不確実性を正しく定量化した多数の確率予測として提供するために必要な基礎研究である。今回の成果によりそのような確率予測が可能になり重要な成果であるといえる。加えて、本研究で開発している統合型干ばつ解析システムについて、その干ばつをモニタリングする性能を検証した。多種多様な現地観測と衛星観測の使用により、おおむね良好な性能を有することを確認することができた。現時点での生態水文量の正確なモニタリングは農業干ばつの予測には不可欠であり、高いモニタリング性能が確認できたことは重要な成果である。さらに、最近発表された正確な位置情報が付与された災害データベースを使用することで、解析システムが示す生態水文量の落ち込みが、社会的に認知された実際の干ばつ災害と対応しているかを調べた。既存の海外の現業気象予報センターで提供されている陸域再解析と比べて遜色なく干ばつ災害を識別することができることが確認できた。これは次年度以降に予定している人間活動に直接影響のある干ばつリスクを表示する「農業干ばつ危険度」の算出に向けて有望な成果であるといえる。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、陸域モデルを用いた不確実性定量化手法の開発を行うことができた。開発中の統合的干ばつ解析システムの干ばつモニタリング性能が十分高いことも確認でき、本研究が最終目標とする農業干ばつの確率予測に向けて有望な結果を得ることができた。また、当初計画では次年度の課題としていた、シミュレーションが推定する生態水文量を災害データベースと結びつける研究も一部行うことができた。総じて順調に進展していると判断できる。
次年度は当初計画通り、陸域モデルを用いたシミュレーションが推定する自然科学的な物理量と災害データベースを結びつけ、社会的に認知される干ばつ災害の発生確率を直接推定する「農業干ばつ危険度」の算出手法の検討に注力する。これまで述べてきた通り、すでに有望な検討結果が得られているため、当初計画を変更する必要はないと考えている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. B1 (Hydraulic Engineering)
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