研究課題/領域番号 |
21H01447
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (60401303)
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研究分担者 |
瀬谷 創 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20584296)
村上 大輔 統計数理研究所, データ科学研究系, 助教 (20738249)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 空間的異質性 / 地理的可変係数モデル / スパースモデリング / 小地域分析 / ESF-SVCモデル / Generalized lasso / 不動産市場分析 |
研究実績の概要 |
空間上の位置によって地理空間現象の生成過程が異なる「空間的異質性」に関して,新たな分析手法を構築した.従来は,現象の生成過程を表す係数が空間上で連続的に変化する異質性と,町丁目界などの空間領域毎に離散的に変化する異質性のそれぞれに対して,異なる分析手法・アプローチが提案されてきた.しかし,地理空間現象には,連続的および離散的に生成過程が変化する空間的異質性を両方有するものもあるため,両者を同時に分析可能な手法の構築が求められている.そこで,本年度は,連続的な空間的異質性を地理的可変係数モデルの一つであるEigenvector Spatial Filtering based-Spatially Varying Coefficient (ESF-SVC) モデルで,離散的な空間的異質性をスパースモデリング手法であるGeneralized lassoで考慮できる融合モデルを構築・提案した. シミュレーションデータを用いた性能検証を通して,提案手法は連続的な空間的異質性と離散的な空間的異質性を区別して抽出することが可能であることを確認し,既存の手法よりも適切に空間的異質性構造を分析できることが示された. また,提案手法を不動産賃料データ分析へと適用し,一種類の空間的異質性しか分析できない既存手法よりも,高い精度で賃料の形成要因を表現する係数推定が可能であることを確認した.係数推定結果は,賃料形成要因には両者の空間的異質性が存在することを示しており,提案手法による分析の有効性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連続的・離散的な空間的異質性を同時に分析可能な手法の構築を,本研究課題の主目的に掲げていたが,線形回帰モデルでの分析に関して,実行可能な分析手法を構築できた.シミュレーションデータや実データへの適用を通して,提案手法の有効性が確認できており,おおむね順調に進展していると言える. ただし,離散的な空間的異質性の抽出に使用しているGeneralized lassoは計算量が多く,大規模なデータに対する適用性には課題がある.そこで,より計算量が少ない分析手法の活用が不可欠である. また,連続的な空間的異質性分析に関して,大域的なスケールでの空間的異質性は分析可能だが,局所的なスケールで変化する空間的異質性の抽出には課題がある.そこで,その解決のため,ESF-SVCの拡張手法である,Random Effects ESF-SVC (RE-ESF-SVC) を取り入れた分析手法の構築を今後検討する.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記載したとおり,離散的な空間的異質性分析に関しては計算量の問題,連続的な空間的異質性分析に関しては小さなスケールでの分析に課題がある.前者に関しては,スパースモデリング手法の一つであるTree-guided Group Lassoを活用し,階層的な離散地域設定を活用した分析を検討する.後者については,RE-ESF-SVCを導入し,大域的から局所的なスケールまでで発生している連続的な空間的異質性の分析を可能とすることを検討する.ただし,これまでの構築手法ではRE-ESF-SVCを活用したモデルの係数は推定できないため,推定アルゴリズムを検討する.
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