研究課題/領域番号 |
21H01461
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
渡邉 智秀 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (60251120)
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研究分担者 |
石飛 宏和 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (00708406)
窪田 恵一 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50707510)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 微生物燃料電池 / 有機性廃水処理 / 酸素還元触媒 / エアカソード |
研究実績の概要 |
窒素および遷移金属の中で安価な鉄と粉末活性炭を原料に用いた高活性な酸素還元反応(ORR)触媒の調整条件を実験的に検討した。具体的には、窒素源となるキトサンまたは尿素、鉄源となる鉄(II)フタロシアニンまたは塩化鉄(III)のそれぞれ原料から1種類ずつ組み合わせるとともに活性炭の有無に応じて所定の配合比となるように混合し、600℃~1000℃の不活性ガス雰囲気下で熱処理して得られた試料の酸素還元反応活性等を比較検討した。 活性炭と鉄(II)フタロシアニンに、キトサンまたは尿素を加えた混合物を熱処理した試料のORR活性は熱処理温度に強く依存し、実験の範囲では800℃前後で最大となることが、対流ボルタンメトリーで得られた活性化支配電流や開始電位の比較検討からわかった。また、試料の窒素吸着法による物理性状の把握やX線光電子分光法による表面解析から、試料の比表面積ならびに試料表面に存在するピリジン型窒素や金属鉄の存在割合の熱処理温度依存性と両者のバランスが触媒活性の温度依存性に深く関係していることを示唆する結果が得られた。 窒素源と鉄源だけで構成された混合物、そこへ活性炭を加えた混合物および活性炭のみのそれぞれを所定条件下で熱処理して得られた試料のORR活性等の相違に基づいて、活性炭に窒素源と鉄源の両者が加えられた混合物が熱処理されると活性炭の炭素骨格に窒素や鉄が取り込まれることで高活性化される可能性を示唆する結果が得られた。 本年度に検討した6種類の配合条件の範囲では、活性炭に窒素源と鉄源の両者が添加されていれば、それらの原料によらず活性炭のみの場合に比べて飛躍的にORR活性が向上し、なかでも特に、鉄(II)フタロシアニンと尿素をそれぞれ鉄源および窒素源として活性炭と混合した系において最も高い活性が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨今の世界的な半導体不足のあおりを受けて、当年度の実施計画を遂行する上で主力となる機器や装置の納入に大幅な遅れが生じ、実質的な取り組みの開始が当初の予定から変更を余儀なくされたことによる。可能な範囲で配合条件等の見直しや絞り込み等を行うことによって、効率化を図って触媒試料の試作や検討を進め、比較的活性の高い試料を得る調整条件の一端が明らかになりつつある。しかしながら、年度当初に計画していた、得られた試料を触媒としたエアカソードを設置したラボスケール微生物燃料電池(MFC)において、模擬有機性廃水に触媒が暴露された場での出力性能を把握し、カソード触媒としての性能を比較検討する実験は、先送りせざるを得ない状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の取り組みにおいて、完全とまではいえないものの、比較的高活性な試料も得られているので、これを利用するとともに段階的に調整条件を変更して得たいくつかの試料も加えて、それぞれを触媒とするエアカソードを作製し、それらを設置したラボスケールMFCでの模擬有機性廃水を使用した試験の準備を早急に進めて試験を開始する。また、これと並行して、比較的高活性が得られた試料における触媒調整条件の最適化および窒素源や鉄源を種々変更した有効な原料化合物の組み合わせの探索も継続し、より高活性でMFCに適した試料の調整条件に関する知見の収集を行う。
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