研究課題/領域番号 |
21H01466
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
藤岡 貴浩 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (20759691)
|
研究分担者 |
安浦 雅人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20760408)
新谷 卓司 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命教授 (90607574)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 逆浸透膜 / 病原体 / 阻止性能 / 製膜 / ウイルス |
研究実績の概要 |
本研究では、無傷の逆浸透膜であっても微生物が膜透過水側に漏洩してしまう課題に対し、逆浸透膜の繊細なポリアミド分離層の下層に孔径が正確にコントロールされた膜を組み込み、微生物漏れのない完全阻止膜を創出することを目的としている。2021年度は、逆浸透膜の下層に保護層としてトラックエッチド膜を重ね合わせることを試み、重ねた後でも逆浸透膜として機能しているかを明らかにするため、この重ね合わせた逆浸透膜の透水性能(単位面積・圧力当たりの流量)と微粒子阻止率を調べた。微粒子には微生物の代替指標である蛍光の球形微粒子(直径0.5μm)を用いた。異なる孔径(0.01~0.1μm)を持つトラックエッチド膜を逆浸透膜の下層に置いた結果、膜の透水性は孔径が小さいほど低下した一方で、微粒子の阻止率は高まることが分かった。具体的には、孔径0.05μmのトラックエッチド膜を使用した場合、膜透水性が20%程度低下することに対し、蛍光微粒子の阻止率は2-log程度上昇した。ただし、孔径0.01μmの膜は膜の疎水性が高すぎるためか、重ねた膜の透水性が大幅に落ちてしまい(つまり加える圧力が非常に高くなってしまい)、実用性に乏しいことが明らかになった。一方で、この手法でウイルスなど微小な病原体の除去を大幅に向上するためには、孔径が0.02μm以下の膜を使う必要性があり、今後は下層のトラックエッチド膜を親水化するか、その膜厚を薄くするなど膜の透水性を高める必要性があることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
逆浸透膜の微粒子阻止率を高める手法としてトラックエッチド膜が有効であることが分かり、トラックエッチド支持膜の上にポリアミド分離層を形成する新しい手法を試みるための準備ができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、トラックエッチド支持膜の上にポリアミド分離層を形成する製膜方法を開発すると共に、その開発した膜をスパイラル膜エレメントに組立て、実際の下水処理水を膜処理することで、微生物の透過側への漏れの有無とその検出濃度・頻度を明らかにする。
|