研究課題/領域番号 |
21H01471
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 恭平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50783213)
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研究分担者 |
成廣 隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (20421844)
延 優 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (40805644)
佐藤 久 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80326636)
山田 真義 鹿児島工業高等専門学校, 都市環境デザイン工学科, 教授 (80469593)
野口 太郎 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90615866)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | DPANN / アーキア / 廃水処理 / 診断技術 / トランスクリプトーム解析 / CPR/Patescibacteria / 超微小微生物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高有機物負荷,高窒素負荷,高カチオン濃度の廃水処理汚泥中で優占化する「DPANNアーキア」を廃水処理の新奇ストレス指標微生物として診断する技術を開発し,その“真”の機能を培養法とトランスクリプトム解析等により明らかにすることである。「DPANNアーキアは廃水処理のストレスを評価する新奇指標微生物になり得るのではないか?」という問い(仮説)について,培養と情報科学・微生物代謝能の観点から学術的に解明することである。 2021年度は,(1) DPANNアーキア優占化反応槽の運転管理と診断技術の開発,(2) DPANNアーキアの二者培養系の構築の試みの2項目について研究を実施した。(1) において,過去にDPANNアーキアの優占化と処理の不調が発生したフェノール模擬廃水を処理する上昇流嫌気性スラッジブランケット (UASB) 反応槽の16S rRNA遺伝子解析及びショットガンメタゲノム解析を実施し,2種のDPANNアーキアのドラフトゲノムの再構築に成功し,ゲノム情報からヌクレオシドを利用可能な代謝を持つことが明らかとなった。得られた知見を基にしてフェノールを基質とするUASB反応槽のスタートアップを行い,順調に有機物負荷を上昇させることに成功している。金ナノ粒子プローブ法を用いたDPANNアーキアの定量についても検討を進めている。 (2) において,ドラフトゲノムから得られた知見を基にしてDPANNアーキアの集積培養系構築を試みた結果,DPANNアーキアと同様の生理生態を持つと予測されているCandidate Phyla Radiation (CPR)/Patescibacteriaに属する系統の集積培養に成功し,DPANNアーキアの二者培養系確立に向けた宿主と共生細菌の動態に関する重要な情報を得た。加えて本培養系にはDPANNアーキアも維持されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度は,(1) DPANNアーキア優占化反応槽の運転管理と診断技術の開発,(2) DPANNアーキアの二者培養系の構築の試みの2項目について研究を実施した。 (1) において,過去にDPANNアーキアの優占化と処理の不調が発生したフェノール模擬廃水を処理する上昇流嫌気性スラッジブランケット (UASB) 反応槽の16S rRNA遺伝子解析及びショットガンメタゲノム解析を実施し,2種のDPANNアーキアのドラフトゲノムの再構築に成功し,ゲノム情報からヌクレオシドを利用可能な代謝を持つことが明らかとなった。得られた知見を基にしてフェノールを基質とするUASB反応槽のスタートアップを行い,順調に有機物負荷を上昇させることに成功している。金ナノ粒子プローブ法を用いたDPANNアーキアの定量については,片鎖のみにDPANNアーキア特異的なプローブを用いた結果,非特異的にDPANNアーキアが定量されていることが示唆された。そのため,フォワード及びリバース側でDPANNアーキア特異的な金ナノ粒子プローブの設計が必要であることが確認された。 (2) において,ドラフトゲノムから得られた知見を基にしてDPANNアーキアの集積培養系構築を試みた結果,DPANNアーキアと同様の生理生態を持つと予測されているCandidate Phyla Radiation (CPR)/Patescibacteriaに属する系統の集積培養に成功し,これら超微小細菌がメタン生成アーキアに寄生することを電子顕微鏡写真及びFluorescence in situ hybridization法により明らかにした。これは,CPR/Patescibacteriaがアーキアに寄生することを示す世界で初めての発見であり,DPANNアーキアの生理生態を知る上で重要な知見である。加えて本培養系にはDPANNアーキアも検出された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,これまで実施してきた(1)DPANNアーキア優占化反応槽の運転管理と診断技術の開発,(2)DPANNアーキアの二者培養系の構築の試み,を引き続き実施するとともに,(3) 廃水処理システム内でのDPANNアーキアの“真”の機能解明を目的として,UASB反応槽もしくはバイアル瓶を用いてDPANNアーキアを数%程度もしくはそれ以上の存在割合で集積培養できた暁には、その培養系のショットガンシークエンス及びRNA-Seqを行い、DPANNアーキアの機能発現解析を行い、その機能を推定する。 (1) では,2021年度にスタートアップしたフェノール模擬廃水処理反応槽を標的としてマイクロバイオーム解析及びFluorescence in situ hybridization法を用いてDPANNアーキアの動態を明らかにする。また,2021年度に課題となったDPANNアーキアの定量では,フォワード及びリバース側でDPANNアーキア特異的な金ナノ粒子プローブの設計を行い,標的DPANNアーキア特異的且つ簡易診断技術開発を引き続き行う。 (2) では,世界で初めて集積培養に成功したCandidate Phyla Radiation (CPR)/Patescibacteriaとメタン生成アーキアの共生培養系を用いてトランスクリプトーム解析を行い,メタン生成アーキア (宿主) とCPR/Patescibacteriaの”真”の機能を明らかにすることで,DPANNアーキアと宿主の相互作用を知る上での手がかりを得る。加えて,メタン生成アーキア (宿主) とCPR/Patescibacteriaの培養系においてもDPANNアーキアが検出されていることから,培養法の改良によりDPANNアーキアの優占化も試みる。
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