研究課題/領域番号 |
21H01508
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前田 昌弘 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (50714391)
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研究分担者 |
中島 伸 東京都市大学, 都市生活学部, 准教授 (50706942)
宮本 匠 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (80646711)
木村 周平 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10512246)
佃 悠 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90636002)
井本 佐保里 日本大学, 理工学部, 准教授 (40514609)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | まちづくり / エスノグラフィ / 事例と厚い解釈 / グループ・ダイナミックス / 当事者のエンパワーメント / 開かれた記述 / 重層性 / 再帰性 |
研究実績の概要 |
本年度は計6回の研究会を開催し,研究分担者である木村(文化人類学),宮本(グループ・ダイナミックス)がそれぞれの学問分野における記述の方法論や実践事例を紹介し,それを都市・建築計画分野の研究者である前田・中島・佃・井本が自身のフィールドへの応用の方法を検討することで議論をさらに発展させた。 1)人類学的なエスノグラフィにおける記述の変遷(①ある集団にみられる文化的・社会的パタンの記述,②個々の事例や出来事とその社会の記述,③何らかの出来事のプロセスの記述,新たな視角をもたらすストーリーの記述)および,実験的なエスノグラフィの試み(1.5次エスノグラフィ)を踏まえ,対話形式で書く,共同で書く,他分野の記述法の利用,長い文章を書く以外の方法(短い文章,映像,展示等)など,コミュニケーションツールとしてのエスノグラフィの活用やPara-ethnography(事例と厚い解釈)の可能性が示された。 2)グループ・ダイナミックスにおける現場を記述するという行為の意味,すなわち,「みんな」あるいは現場を支配する空気に働きかけるアクションとしての意味,そのために誰が何をどのように記述するかと同等に現場でそれをどのように共有するかが重要であることが示され,また,まちづくりの当事者のエンパワーメント(力づけ)につながる記述の条件として,記述が開かれていること,記述を通じて相互の理解が深まること,解釈の余地が残されていることといった条件が示された。 3)上記1)2)を踏まえ,まちづくりの実践的研究の現場に「公正な記述」を実装する方法について意見交換を行い,「重層性」(multiplicity,同じ対象を複数の主体が異なるレベルで書く)と「再帰性」(reflectivity,書かれたものを顧みながら自己や他者に対する認識を深める)が方法論的な基盤となる可能性があることを共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市・建築計画分野の研究者(前田・中島・佃・井本)と隣接領域の研究者(文化人類学・木村,社会心理学・宮本)の対話を丁寧に重ねることで,それぞれの学問分野における記述のスタンスや具体的な方法論についての相互理解が深まるとともに,社会的葛藤を抱えるまちづくりの現場における価値の公正な記述の方法について,大まかな方向性が共有されつつあることから,研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年度までの議論の成果を踏まえ,都市・建築計画分野の研究者(前田・中島・佃・井本)がそれぞれの実践的研究の現場において「価値の公正な記述」を実装し,そこに隣接領域の研究者(文化人類学・木村,社会心理学・宮本)が参加しながら,記述の方法について検証を進める予定である。
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