研究課題/領域番号 |
21H01541
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
井田 徹哉 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80344026)
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研究分担者 |
綿崎 将大 広島商船高等専門学校, その他部局等, 助教 (50791125)
山口 康太 大島商船高等専門学校, 商船学科, 講師 (60881216)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 海洋発電 / リニア発電モジュール / アンジュレータ型潮流発電機 / ダイレクトドライブ型波力発電機 / 高温超電導バルク |
研究実績の概要 |
本研究は回転タービンを持たない、新形式のアンジュレータ型潮流発電機の採用によって我が国おける潮流発電の実用化を推進することを目的として実施された。アンジュレータ型潮流発電機は潮流を膜のうねりに変換して発電を行う。回転タービンを用いないこのシステムにおいて、発電に必要な流速は0.4 m/s 程度と低く、2 m/sで実用的な発電が可能である。膜のうねりから発電をするためには、直線運動から電力を得るリニア発電モジュールを用いる必要がある。リニア発電モジュールの変位量はかなり小さくなる。潮流に対する流体損失を抑制するために、リニア発電モジュールの外形寸法は小さいほど望ましい。一方、潮流による膜の変動周波数は概ね0.4 Hzと低く、そのストロークの短さと合わせて大きな電力を得ることが難しい。空気の840倍という高い密度を持つ海水に曝されるこの構造は大きな力を受け止めて確実に発電する必要のあるため、リニア発電モジュールには緩衝器としての役割も期待される。 本研究では課題解決手段のひとつとして、発電時に電機子コイルで得られる電流密度は磁束密度が大きいほど増加することに注目し、界磁子に高温超電導バルク材料を採用することを検討し、リニア発電モジュールの試設計を行った。界磁子をリニア発電モジュールの上下層と中層に設け、その間に電機子を挿入して往復駆動させた。電機子には当研究室で回転機の駆動に使用実績のある渦巻型コイルを採用した。界磁子にNd-Fe-B永久磁石を使用した5 kW出力のリニア発電モジュールに対して、高温超電導バルク磁石を界磁子に使用した場合は最大で3倍を超える平均出力と力密度が得られることが示された。但し、高温超電導バルク磁石を実機に搭載する場合、冷却のために冷凍機を利用する必要があり、その運転に要する消費電力を始めとするコストを考慮すると出力向上比はこれより小さくなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はアンジュレータ型潮流発電システムの実用化に向けたリニア発電モジュールのうち、主に発電部の開発を行った。リニア発電モジュールの実用例は少なく、また海洋発電を想定した製品は市場に見られない。本研究課題では単純化したスケールモデルを使った実験と有限要素法電磁界解析を通じて独自に発電部の概念設計を行い、特に材料の工夫、それに内部構造を工夫することで、高い出力を実現するための方策についていくつか成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は機構部の概念設計にも着手する。同時に、発電部の概念設計を通じて得られた成果を元に、より具体的な設計を始める。特に、有限要素法解析だけでなく、スケールモデルあるいは試験環境を試作して、リニア発電モジュールの開発を進める。そうして開発した要素技術を摺り合わせ、発電に耐える試験機を製作し、単体での発電試験を経て、アンジュレータ型潮流発電機への搭載による海洋発電を試みる。実海域試験の実施には周辺海域に対して使用権を有する漁業関係者等から理解を得ることが重要である。そのため、関係者間への情報提供、説明等については開発に先んじて順次進めて行く。 昨年度の研究成果の一部にについては、本年度上半期を目処に特許申請を行い知財化を目指す。
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