研究課題/領域番号 |
21H01561
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
倉橋 節也 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40431663)
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研究分担者 |
小野 功 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (00304551)
寺野 隆雄 千葉商科大学, 基盤教育機構, 教授 (20227523)
吉田 健一 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40344858)
津田 和彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50302378)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | エージェントモデル / 新型コロナ感染症 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本年度は、家庭内における新型コロナ感染症の予防効果をモデルベースで予測・評価することを行った。感染状況、世帯構成、家庭内感染者、流入感染者、帰宅者などのデータと、飛沫感染リスク推定、感染予防策、保健医療政策などの社会モデルを結合し、個体ベース社会モデルを構築した。これらのモデル基盤構築を目的とし、新型コロナ感染症の家庭内感染エージェントベース・データ同化モデルの研究を実施した。主な成果として、人の帰宅時行動は確率的に発生すると仮定し、部屋を移動しながら接触行動をするときのウイルス接触伝播モデルを構築した。昨年度に調査した、帰宅時における接触行動に関するアンケート結果から、帰宅してから自宅での定常行動に移行するまでの室内での物品への接触行動を分析した。そして、エージェントの接触行動によって付着,拡散するウイルス数を算定するため、流体シミュレーションモデルに実験結果を用いて、家庭内での感染リスクを推定した。その結果、手洗いにより手に残存するウイルス数は減少するものの、玄関で周囲に付着するウイルス数の大幅な減少はみられず、また、手洗い時期の遅れにより、ウイルス拡散抑制効果は低いことが判明した。このことから、任意のタイミングでの手洗いでは、家庭内へのウイルス拡散を防ぐことが難しいことを明らかにした。また、家庭内で療養している感染者からの感染リスクについても、エージェントモデルを構築し推定を行った結果、室内から出るときの手指の消毒が有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新型コロナ感染症のモデルに集中した研究を実施することで、社会的要請の強い感染リスクを抑制する施策についての意思決定を支援する結果をタイムリーに発信することができた。また、医薬品のビジネス価値評価として、データ駆動型予測モデリングとモンテカルロ・シミュレーションに基づくシナリオツリー法を新たに提案することができた。モデルに必要な、社会ネットワークに関する調査と分析については、ネットワーク分析を用いたプロアクティブ行動発生要因分析を行い、周囲の状況をいち早く察知し、適切な意思決定と行動を行うことができる人材の推定方法を提案した。これらの成果から、複合的な影響をシミュレーションするための社会・経済制度設計のモデル構築などの計画の準備を進めることができた。新型コロナ研究に集中したことにより、より一般的なモデルの基盤構築は遅れているものの、内閣官房AIシミュレーションプロジェクトにおいて有用性を評価されたことから、社会貢献としては大きな成果を上げているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
社会データ同化手法として、合成人口データによる世帯構成、医療レセプトデータなどの時系列を含む異種データと、都市コンパクト化政策、 感染予防策、保健医療政策、社会経済政策などの社会モデルを多層に結合し、異種データから、多層社会モデルのパラメータを高精度で推定する社会データ同化手法を開発する。構築したモデルに、実数値進化計算最適化法を結合させ実験を実施する。 これらから、社会ネットワークの変化を実装したモデルで、災害発生時の避難行動や地域医療サービスの適正化などを社会システムの視点から分析を行う。
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