研究課題/領域番号 |
21H01569
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
水野 貴之 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (50467057)
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研究分担者 |
栗崎 周平 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70708099)
土屋 貴裕 京都先端科学大学, 経済経営学部, 准教授 (70761253)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 計算社会科学 / 複雑ネットワーク科学 / ビッグデータ / 経済安全保障 / 経済物理学 |
研究実績の概要 |
経済ネットワークのグローバル化は,分業や交流による生産や技術の向上を生み出した一方で,武器や麻薬といった世界の闇と我々とを無意識のうちに間接的に繋げた.大国や大企業は,複雑なグローバル株所有ネットワークを利用して他国の産業を支配できるようになった.経済のグローバル化が生み出した国家と人間の経済安全保障問題を解決するための社会セキュリティ科学を,情報科学(複雑ネットワーク科学)と国際政治学(国際関係論・安全保障学)を融合して創出する.これまでにグローバルサプライチェーンを中心に社会セキュリティに関する研究をおこなってきた.本課題では,この成果をグローバル投資ネットワークと,仮想通貨送金ネットワークに応用し,(1)ESG投資の評価,(2)カントリーリスクの見える化,(3)仮想通貨市場の健全化に取り組む.2021年度は,(1)と(2)について研究を実施した. (1)ESG投資の評価では,全世界1億社の大株主リスト,マスメディアや調査会社により報告された環境・社会・ナンス(ESG)に配慮していない企業のリスト,株・社債で構成される80万件の金融商品(ETF,投資信託)のリストを結合して,グローバルな投資ネットワークの中での,大株主や金融商品と,アンチESG企業との連結性(繋がる確率や繋がる経路)を明らかにした.投資運用会社が,これらの接続に果たす役割と責任についても明らかにした. (2)カントリーリスクの見える化では,各国の主要株主と政府が,株所有ネットワークを介して他国の各産業の株主総会に間接的に与える影響力を測る数理手法と,この影響力の株所有ネットワーク上の流れを数値化する手法を開発した.株所有ネットワークを通じた株主の間接的な影響力は,直接の子会社への影響力を持ち株比率の非線形性を考慮して算出し,影響力を逐次的に孫会社,ひ孫会社へと下流に伝搬させることで見積もれる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画どおりの成果がでている.
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今後の研究の推進方策 |
(1)ESG投資の評価では,M&Aによる株所有ネットワークのダイナミクスを調査する.グローバル株所有ネットワークは,時間変化するテンポラルネットワークである.ポートフォリオの組み換えや日々の株取引でも株所有ネットワークは変化はするが,M&Aによる変化は大規模である.子会社を通じて買収することにより大株主が影響力を拡大する事例や,買収防衛策によりネットワークの変化を抑制する事例,コミュニティを頑強する事例がある.M&A戦略とグローバル株所有ネットワークのリンクのダイナミクスの関係を明らかにすることにより,ネットワーク変化の戦略的意味付け,株所有ネットワークのフォーキャスト,M&Aのマッチングの成功確率とネットワーク統計量との関係が明らかになる. (2)カントリーリスクの見える化では,サプライチェーンにおける経済安全保障のハイリスク企業の候補を自動検出するアルゴリズムを開発し,リスク調査の一次スクリーニングへの社会実装を検討する.具体的には,グローバルサプライチェーンのネットワークデータとグローバル株所有のネットワークデータを結合して,前年度開発した大株主の影響力を測るアルゴリズムを適用することで,原材料の調達過程における隠れ株主,特にサプライチェーンのハブへの外国政府の影響を可視化する. (3)仮想通貨市場の健全化では,仮想通貨のグローバル送金ネットワークにおける違法アカウントへのお金の流れを制御する送金アプリケーションの開発をおこなう.
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