研究課題/領域番号 |
21H01645
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和田山 智正 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (20184004)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / アノード / 触媒材料 / イリジウム / イリジウム合金 / 水素酸化反応 / 過酸化水素生成 |
研究実績の概要 |
本研究においては、構造の規定されたIr系合金単結晶表面を超高真空中で物理構築・モデル触媒化した表面系を用いて、固体高分子形燃料電池(PEFC)のアノードで進行する水素酸化反応(HOR)や過酸化水素(H2O2)の生成メカニズムを検討する。その上で、アノード触媒開発に不可欠な表面構造を原子レベルで提示するとともに、得られる表面構造設計指針に基づきIr系合金触媒ナノ粒子を気相合成して、その優れた触媒能を実証することを目的とする。より具体的には、PEFCアノード触媒材料としてIrとその合金系を選択し、分子線エピタキシ(MBE)法やアークプラズマ堆積(APD)法を用いて、Ir単結晶表面合金のような構造規制された表面をアノード触媒の表面モデルとして物理構築し、走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いてHOR活性とH2O2生成特性を評価して反応メカニズムを明らかにしたい。 R3年度は、Ir系合金表面のアノード特性を検討するのに先立ち、まず単味Irの基本低指数面(111),(110),(100)表面について、それぞれHOR活性とH2O2生成特性を評価した。その結果、HOR活性は、対Pt(111)比でIr(111)では約半分、Ir(100)の場合1/3程度と評価された。一方H2O2生成量に関しては、Ir(111)は Pt(111)と比較して測定電位領域に渡って大幅に低下しており、対Pt(111)比で約15 %であった。アノード触媒材料としては、HOR活性が高くかつH2O2ができるだけ生成しない表面特性が望ましい。その意味から、基本低指数面で比較すると(111)面がもっともアノード特性に優れており、実触媒としてはIr(111)表面で構成される正八面体構造が望ましいことを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、単味のIr(hkl)(hkl;111,110,100)単結晶基板上に、異種元素をMBE、APD法などのドライプロセスを用いて超高真空中において蒸着し、Ir系の構造規整合金表面を物理構築した上でそのアノード特性(HOR活性およびH2O2生成特性)を電気化学顕微鏡(SECM)で評価解析し、Pt(hkl)系に関する先行研究と比較し、単味Ir表面の特性を明確にすることを目指した。 R3年度においては、まずIr(hkl)表面を超高真空中で清浄化し、その表面のHORおよびH2O2生成特性をSECM評価して、アノード特性に面方位依存性があることを明らかにでき、またIr-Ru合金系についても検討に着手するなど、おおむね予定通りの進捗と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度に行ったIr基本低指数面(hkl)のアノード特性(HOR活性およびH2O2生成特性)評価結果から、Ir(hkl)中においてHOR活性とH2O2生成が抑制される特性が良いのはIr(111)面であることがわかった。その知見に基づいて、R4年度以降は、Ir(111)基板上に合金化元素を蒸着した場合の、上記アノード特性への影響を検討する。 具体的には、合金化元素としてRuを取り上げ、Ru蒸着量(質量膜厚)や堆積基板温度を制御して物理構築したIr-Ru(111)表面について、その表面構造(原子配列)とHORおよびH2O2反応メカニズムについて、大学院生とともにSTMやLEEDなどの表面解析とCV,LSV,SECMなどの電気化学評価を行うことを通じて、検討してゆく予定である。
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