研究課題/領域番号 |
21H01647
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金 へよん 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20333841)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マルテンサイト変態 / 形状記憶合金 / 超弾性 / Zr合金 / 生体材料 |
研究実績の概要 |
本年度は、Zr-Nb-SnおよびZr-Nb-Al合金を用い、相構成が応力ヒステリシスに及ぼす影響について調査した。また、応力ヒステリシスの低減と超弾性特性の改善を試み、Zr-Ti-Nb-Sn、Zr-Mo-Sn、Zr-Ta-Sn、Zr-Nb-Al、Zr-Ti-Hf-Nb-Sn合金を新たに設計した。各合金をアルゴンアーク溶解法で作製し、微細組織、結晶構造、マルテンサイト変態温度、超弾性特性を調べた。 Zr基合金の超弾性特性は、変態ひずみおよび母相とマルテンサイトの界面構造以外に、ω相および体心正方晶のβ'相の形成が重要な役割をすることが明らかになった。冷却・加熱下でのその場XRD測定により、β相とβ'相の間の変態が可逆的であることがわかった。SEMおよびTEM観察の結果、β'相は負荷により、斜方晶マルテンサイト(α")相へ変態することが分かった。その応力誘起マルテンサイト相の内部に転位組織が観察されることから、β'相はマルテンサイト誘起応力を増大させ、逆変態を阻害することが推察された。その結果、応力ヒステリシスを増大させ、超弾性特性劣化の原因になることが分かった。また、SnおよびAl濃度の増加に伴い、β'相の体積分率が減少し、まばらになることが確認できた。さらに、SnおよびAlは非熱的ω相の抑制にも有効であり、Zr基合金の応力ヒステリシス低減と超弾性特性の改善に有効であることを明らかにした。 Zr-Ti-Nb-Sn、Zr-Mo-Sn、Zr-Ta-Sn、Zr-Nb-Al、Zr-Ti-Hf-Nb-Sn合金において応力誘起マルテンサイト変態と形状記憶効果および超弾性の発現が確認できた。Zr-Ti-Nb-Sn合金において、Tiの添加量の大きくなるほどβ'相が減少し、超弾性特性が改善した。Zr-Ti-Hf-Nb-Sn合金は、磁化率がZr-Nb-Sn合金に比べ低く、室温で超弾性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、準安定Zr基合金の相構成、微細組織、マルテンサイト変態挙動に及ぼす添加元素の影響について系統的に調査した。Zr基合金の応力誘起マルテンサイト変態と超弾性メカニズムについて新たな知見が得られた。その結果、Zr基合金の超弾性特性改善の方針や合金設計指針を確立することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
超弾性特性および力学特性の向上を試み、前年度まで見だしたZr-Ti-Nb-Sn、Zr-Mo-Sn、Zr-Ta-Sn、Zr-Ti-Hf-Nb-Sn系合金の組成最適化および組織制御を行う。各合金をアルゴンアーク溶解法で作製し加工熱処理を施した後、微細組織、結晶構造、変態温度、形状記憶特性、超弾性特性を調べる。Ti、Nb、Ta、Mo、Snなどの添加元素がマルテンサイト変態温度および相構成に及ぼす影響を調べる。特に、超弾性特性の劣化の原因である、β'相の形成範囲および形成条件を明確にする。超弾性を示す合金系を選定し、圧延率、焼鈍温度などの加工熱処理条件を変化させ、組織制御を行う。
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