研究課題/領域番号 |
21H01655
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
沈 用球 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20336803)
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研究分担者 |
金 大貴 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00295685)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光誘起変形 / 過渡応答特性 / 光熱変換 / 機能性材料 / 光駆動 |
研究実績の概要 |
本年度は,光照射による変形の過渡応答特性を計測するための測定系構築を主たる研究目的とした。ポンププローブ方式での測定計にマイケルソン干渉計を組み込むことで,ポンプパルス光による試料表面の変形量過渡応答特性を測定可能な測定系を構築した。 測定対象として3元タリウム化合物を試料とし,ミリ秒パルス光を用いた実験では,光照射時の変形誘起特性および非照射時の変形減衰特性の計測に成功し,それぞれ過程の変形時定数を求め,両過程において,それぞれに速い成分と遅い成分が含まれていることを明らかにした,そして,有限要素法によるシミュレーション計算結果との比較からも,これ等の成分の存在を確認し各成分の起源となる物理過程を明らかにした。そして,これ等の成果を学会にて発表した。 さらに,当該年度後半では,波長可変ナノ秒パルスレーザーをポンプ光として,構築した測定系に導入し,さらに高速な光誘起変形過渡応答特性や光誘起弾性波計測のための準備を行った。 また,偏光計測系(透過型エリプソメトリ)による,光誘起変形時の試料の屈折率変化を二次元イメージング計測可能な測定系の構築も行い,実際の試料測定を通して,より精度の高い測定が可能となるように改良を行った。 本研究は,アゼルバイジャン科学アカデミーのNazim Mamedov教授のチームと国際共同研究として実施しており,先方を訪問することで,新たな3元タリウム化合物試料を作製するとともに,今後の研究方針についても議論することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画で中心となる課題として「光誘起変形の過渡応答特性測定系構築」を掲げていた。期間中に,ミリ秒パルスレーザーをポンプ光とした,本測定系を予定通り構築し,実際に3元タリウム化合物に対して,光誘起変形の過渡応答特性測定の実験に成功した。また,シミュレーション計算結果との比較から,過渡応答特性の物理的過程についても明らかにし,これ等の成果を学会にて発表した。 また,次のステップであるナノ秒パルスレーザーの導入や偏光透過測定による屈折率変化測定系の構築も完了しており,次の段階である,光誘起弾性波発生や光学定数変化の測定に向けた研究を行う準備を整えた。 新たな3元タリウム化合物試料取得のための国際共同研究先であるアゼルバイジャン科学アカデミーへの訪問は,次年度に延期されたが,既存の試料で測定を行えたため,進捗状況に与える影響は少なかった。 このように,当初予定していた研究課題について取り組み,結果も得られていることから,研究は全般的に順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
構築した光誘起変形の過渡応答特性測定系について,ミリ秒パルス光に対しては十分な性能を持つことがわかったため,本現象による光駆動アクチュエータ等の光駆動機構への応用に向けて,変形量や変形速度とミリ秒パルス光の照射条件(パワー,時間パルス幅,繰り返し周波数等)の関係を明らかにし,光誘起変形の制御性を明らかにする研究を遂行する。 本研究の主目的である,光誘起弾性波の発生と計測を実現するため,ナノ秒パルスレーザーをポンプ光として用いた場合の,変形過渡応答特性の測定を行い,シミュレーション計算結果との比較から,本現象の発生条件や発生原理について明らかにする研究を推進する。
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