研究課題/領域番号 |
21H01656
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
金野 泰幸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50214482)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属間化合物 / 耐熱合金 / 二重複相組織 / 合金設計 / 組織制御 |
研究実績の概要 |
マルチスケール組織創製のためのマトリックス組織の強化に関して、Ni基二重複相金属間化合物に対する合金元素添加と非化学両論組成の影響を調査した。本合金の基本組成であるNi-Al-V合金に対して、化学量論組成よりNi量が多い非化学量組成合金と、これに強化能が高い高融点元素であるNb、Ta、Tiを添加した合金をアーク溶解法によって作製し、所定の熱処理を行った。SEM、TEMによる組織観察の結果、Ni量増加と高融点元素添加を行った場合でも二重複相組織が維持されることが確認された。室温引張試験ではNb, Ta添加合金で強度が大きく上昇し、高温(900 °C)引張試験ではNi過剰組成とNb添加の組み合わせにより,高強度を維持しつつ,高温での延性が向上した。Nb添加合金のTEM観察では、Nbはチャンネル内の初析との界面に高濃度に偏在すること、また、900℃変形後には多数の面欠陥が確認されるなど、これまで不明であった二重複相組織の変形組織の一端が明らかになった。 一方、二重複相組織と軟質相との複合化について、Ni-Al-V合金粉末と高融点元素であるMo粉末を用いて、レーザメタルデポジション(LMD)により、肉盛層の作製を行った。組織観察の結果、肉盛のままではラメラ組織と、比較的粗大な初晶Mo固溶体相からなる凝固組織を呈していたが、熱処理後には粗大なMo固溶体相とともに、初析とチャンネルからなる二重複相組織の形成も確認された。さらに、熱処理後の二重複相組織中には、比較的微細なMo固溶体の析出物も観察された。以上より,レーザ肉盛後に熱処理を行うことで、二重複相組織をマトリックスとして、粗大な初晶Mo固溶体相と微細なMo析出物が分散した複相組織をもつNi基超々合金肉盛層の作製が可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ni基金属間化合物合金をマトリックスとしたマルチスケールの新たな複相組織の創生を行っている。初年度は、マトリックスとなる二重複相組織について、非化学量論組成と高融点遷移元素添加の重畳効果により高温機械的特性の向上が図られることを見出し、合金設計の指針を得た。また、実用用途では重要な使用法となる肉盛層において、二重複相組織と高融点固溶体相が共存する複相組織の創生に成功するなど、当初目標に沿った結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も本研究課題の目的である、Ni基金属間化合物合金のさらなる高強度化と耐摩耗性の向上を図るための新規なマルチスケール複相組織に関する研究を行う。具体的には、二重複相組織および単相金属間化合物組織に対して、硬質あるいは軟質相を導入することで複相組織化を行い、特性評価によりその有用性を検証することで、マルチスケール強化原理の構築を目指す。
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