研究課題/領域番号 |
21H01666
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
岩本 知広 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (60311635)
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研究分担者 |
倉本 繁 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (10292773)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超音波接合 / その場観察 / 透過型電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
超音波接合過程のその場観察を行うにあたって、まずAlのTEMによる予備観察を行った。これより、Al表面には数nmの厚さのアモルファス酸化物が存在していることが分かった。TEMで観察しながらこのAl片に超音波を印加し別のAlと接触させると、Alに大きな損傷を生じさせることなく酸化物が除去されることが分かった。超音波接合では酸化物の除去過程が重要であると考えられているが、実際にナノレベルのこの過程が観察されたのは、今回が初めてである。さらにこの除去過程では多数のナノ粒子が接合界面近傍に生成し、それらが試料間に集積することで接合を促し、微細粒領域を含んだ界面を形成した。これらのナノ粒子の微細組織観察、構造解析から、ナノ粒子は多結晶のAl粒子を含んでおり、このAlが接合に寄与することが明らかになってきた。 またこの実験におけるハードウェア側の改良では、観察における様々な問題を検討した。超音波接合過程観察ホルダーにおいて、超音波振動に対する試料の形状や観察場所の影響を確認するため、とりつけた試料の様々な場所における超音波振動の状態をTEMにより観察した。その結果、同一の超音波を印加した場合でも試料の場所によって、振動の状態がかなり異なることが分かった。また、出力を低くすることで超音波振動の振幅を減少、空間分解能を上げ、転位などの微細組織を観察することが可能であった。一方、開発した試料ホルダーは外部ノイズや振動の影響を受けやすく、さらに詳細な解析に必要な分解能を得るのが困難であった。このため、超音波接合用電源内やコードなどのシールドによるノイズの低減を検討したが、それだけでは分解能低下を抑えることが難しく今後の検討課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した超音波接合過程観察ホルダーにおいて、再現性良くAlの超音波接合が出来るようになってきた。まだ、試料の超音波振動状態の変動や、その場観察における分解能の不足、不安定性など、実験における課題は山積しているが、本観察により超音波接合プロセスを検討することが可能になってきた。現状ではおおむね順調に実験は進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ハードウェア側の改良としてコードなどのシールドによるノイズの低減を検討したが、微細観察における分解能低下に対する明瞭な効果は見られなかった。本年度はさらに新たに開発したホルダー全体を駆動する電源を対象にしてノイズの低減を試みる。また、現状の環境における超音波接合その場観察実験では、Al同士の超音波接合におけるAl表面の酸化物層の観察およびその除去過程の評価が可能であった。これに対して表面酸化物がないAu同士の超音波接合では、ナノ粒子がほとんど生成せずAuの塊が大きく移動する様子が観察された。本年度はこの表面酸化物の有無による接合過程の違いについてさらに詳細に追及する。また、材料内部における転位の移動の観察及びその解析については、観察分解能の向上、実験試料の方位の制御を試みながら、観察手法の確立をめざし引き続き行っていく。 量産の超音波接合であるウェッジボンディングでは、Al同士の接合の他に、Al上にNiを被覆した基板に対してAlワイヤを接合することが行われている。この場合、接合界面の微細組織がNi皮膜により大きく変化することが明らかになってきた。本年度はこのAlとNiの接合系に対しても超音波接合その場観察を応用することで、接合過程におけるNiの影響を究明していく。
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