研究実績の概要 |
安心安全な溶媒を用いた抽出分離技術に対する社会的ニーズは高い.申請者がこれまで科研費を中心に2012年よりオリジナル展開してきた高圧二酸化炭素(CO2)を用いた亜臨界溶媒分離法(高圧気液平衡に基づく分離法)は,1980年代より進められてきた固定床半回分式超臨界CO2抽出法の低い生産効率という技術的課題を克服するもので流通式量産化を実現している. 次なる課題解決に向けて,オリジナル理論に基づく分離予測法の開発を研究題材とした.特に,支配因子である高圧下における溶質の気液平衡比(液相組成に対する気相組成の比)をデータバンク化するとともに,それらを精度よく再現するモデルの開発を4年という研究期間のもと検討したいと考えた. 令和4年度の結果の概要では,ある種の医薬品原料からの気液平衡比を基礎物性としてデータベース化するだけでなく,オリジナルの無次元分配理論の基礎部分を構築することができた.これにより,好適な分離条件等についての問い合わせがあった場合に即座に回答できるような理論計算環境の基盤を整備することができた.また,流体密度の測定も実施し,流通式振動管式密度測定法における化学工学的理論モデルを構築することができた. より具体的には,世界最先端の流通式高圧気液平衡比測定装置を用いて,各種溶質における気液平衡比データを収集・蓄積することに成功した.昨年度提出した化学工学論文集では,2021年度優秀論文賞を受賞することができた.今後は,実験対象として,医薬食品・飲料,化粧品・化成品等への幅広い応用を見据えたときに付加価値の高い植物2次代謝物等が適していると考えていることからさらに実証例を増やしていきたいと考えている.
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