研究課題/領域番号 |
21H01686
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山口 猛央 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30272363)
|
研究分担者 |
大柴 雄平 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10708530)
菅原 勇貴 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10814791)
田巻 孝敬 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80567438)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 水処理膜 / ファウリング / ドーパミン / 水晶振動子マイクロバランス / データサイエンス |
研究実績の概要 |
本研究では、市販多孔質膜の表面状態を簡便に制御する膜表面改質法と水晶振動子マイクロバランス測定による精密改質表面のスクリーニング、及びデータサイエンスを駆使した水質ごとの表面設計手法を組み合わせ、それぞれの水質でファウリングを抑制する最適な膜表面をテーラーメードに設計する手法を確立することを目的とする。今年度は、様々な多孔質膜基材に修飾が可能なポリドーパミンを介した、双性イオンポリマーの簡便な膜表面精密制御法の開発を行った。まず多孔質基材を適切な条件でドーパミン水溶液に浸漬させたところ、膜細孔内に均一かつ非常に薄いポリドーパミン層を形成することに成功した。さらに、形成させたポリドーパミン層を修飾し、細孔内にClick反応活性な末端三重結合を高密度に導入した。このように表面修飾した多孔質膜基材に対して、原子移動ラジカル重合によって、ポリマー長を制御しながらアジド末端を有する双性イオンポリマーを合成し、高反応性、高選択性のClick反応を用いて膜表面に固定化することに成功した。また、固定化時の溶媒を適切に選択することで、ポリマー鎖の広がりを高度に制御することができ、細孔内ポリマーの固定化密度を精密に制御することに成功した。さらに作製した双性イオンポリマー精密修飾膜に対して、蛍光標識されたウシ血清アルブミンを用いた静的なファウリング評価を行い、非常に高いアンチファウリング特性を有していることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初予定していた通り、浸漬による双性イオンポリマーの簡便な膜表面精密制御法の開発を行った。本方法で、双性イオンポリマーを膜表面に精密修飾することができ、修飾膜はアンチファウリング特性を有することを確認した。今年度開発した方法は、データサイエンスによるモデル構築に向けた、水晶振動子マイクロバランス測定による精密改質表面のスクリーニングを行う上での基盤になるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に構築された浸漬による双性イオンポリマーの簡便な膜表面精密制御法を用いて、表面双性イオンポリマーの密度や長さを変化させた場合におけるファウラント吸着挙動の変化を分析する。方策としては、第一に今年度同様、蛍光タンパク質を静的環境下で吸着させた場合の吸着挙動を蛍光顕微鏡によって分析する。さらに、表面近傍で流れがある場合の動的な吸着挙動に関しては水晶振動子マイクロバランス測定によって行う予定である。これらのアプローチにより、膜表面構造とファウラント種を変化させた場合の吸着量および挙動にかんして、機械学習で使用するためのデータを揃える。
|