研究課題/領域番号 |
21H01699
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 弘和 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70701340)
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研究分担者 |
矢作 尚久 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 教授 (30365431)
太田 誠一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40723284)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 感染症数理モデル / ダイナミックシミュレーション / プロセス設計 / COVID-19 / ワクチン・治療薬 / デュアルユース / コンパニオン診断 / 診断・治療用ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、感染症流行をいち早く検知してワクチン・治療薬を迅速に供給するための、生産支援システムの構築である。研究では、ワクチン・治療薬の需要予測を得る「需要予測モジュール」と、与えられた需要予測に対して、速度やコスト面の最適プロセスを得る「プロセス設計モジュール」を構築し、これらを統合した「統合生産システム」につなげていく。初年度である2021年度は、当初計画に従い、遂行項目①「需要予測モジュールの構築」と項目②「プロセス設計モジュールの構築」、並びに項目④「システムのソフトウェア実装」に取り組んだ。「需要予測モジュールの構築」としては、新規感染予測モデルの開発に取り組んだ。研究には、前年度より開発に着手していたモデルを用いた。本モデルは、代表的な感染症数理モデルのSEIRモデル(Susceptible-Exposed-Infected-Recovered:SEIRモデル)に、人流・気象データを用いてパラメータを動的に推定するという、独自の改良を加えたものである。モデルは、日本国内のCOVID-19に適用可能であることを確認し、分析結果とともにScientific Reports誌で論文発表した。さらに、患者の生体シグナルからいち早く感染拡大の予兆を掴むための、診断・治療用ナノ粒子開発や、コンパニオン診断技術の開発、評価基盤構築にも取り組んだ。寒冷刺激を組み込んだモデルの応用も検討した。「プロセス設計モジュールの構築」としては、既存薬の製造設備を、感染拡大時にワクチン等の生産に転用するデュアルユース設備の推進策に注目し、国内のCOVID-19に関して、設備切り替えのタイミングと感染拡大の関係を分析した。「システムのソフトウェア実装」としては、上記研究で個別に構築したモデルを連結・統合して利用するための予備的検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遂行項目①「需要予測モジュールの構築」については、人流・気象データを用いた独自の感染予測モデルを構築した。さらに、生体シグナルから感染拡大の予兆を掴むための要素技術開発や評価基盤構築にも研究を展開した。項目②「プロセス設計モジュールの構築」については、製薬産業で注目を集めるデュアルユース推進策に関して、切り替えタイミングと感染拡大の様子を結び付ける分析モデルを構築した。項目④「システムのソフトウェア実装」については、予備的分析を開始した。初年度では学術誌1報、学会発表4件(国内4件)の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の2022年度は、当初計画に従い、遂行項目①「需要予測モジュールの構築」と項目②「プロセス設計モジュールの構築」、並びに項目④「システムのソフトウェア実装」に引き続き取り組む。項目①については、構築した感染予測モデルを発展させていくとともに、生体シグナル計測のための要素技術開発や、コンパニオン診断の評価基盤モデル構築を進めていく。項目②については、安全保障の観点からも課題になりつつあるサプライチェーンに目を向け、安定供給に向けたボトルネックの分析を実施していく。必要に応じて、個別の単位操作の分析や、経済性や品質、環境面での評価も検討する。項目④については、個別モデルのモジュール化と統合化に向けた検討を進めていく。
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