研究課題/領域番号 |
21H01717
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
片田 直伸 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00243379)
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研究分担者 |
窪田 好浩 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (30283279)
辻 悦司 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80610443)
菅沼 学史 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (90731753)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゼオライト / 固体酸触媒 / 芳香族 |
研究実績の概要 |
未利用資源の有効利用などのため,大細孔強ブレンステッド酸性の触媒が求められる.YFI (YNU-5)型ゼオライトの酸性質をアンモニアIRMS-TPD法および量子化学計算で解析し,強ブレンステッド酸点が狭いisolated 8-ring (以後i8r)に存在することと,広い12-12-8-ring system (以後12rS)側の分子と反応する機構がわかった. 簡便で大スケールの合成法を確立した.厳しい条件での酸処理により12rS側から脱Alが起き,Si-migrationが促進され,(水)熱安定性が向上し,i8rの強ブレンステッド酸点を残し,強度を保ったままブレンステッド酸点濃度を調節できることがわかった.DTO反応において高度脱Al体(Si/Al = 287)では,反応初期にまずi8r由来酸点がまず失活し,その後は12rSで主に反応が進行することが示唆された. 脱Al YFIゼオライトは,大細孔強ブレンステッド酸性の触媒が求められるナフタレン・2-メチルナフタレンのメタノールによるメチル化,2-メチルナフタレンの異性化,ポリプロピレンの分解に活性を示し,2-メチルナフタレンの不均化には不活性であった.ピログルタミン酸の水素化に対するRu触媒には大細孔強ブレンステッド酸性の担体が求められ,YFIゼオライトは高活性をもたらした.ナフタレン類のメタノールによるメチル化では劣化が速く,i8rにメタノールだけが入って重合したためと推測される. 以上,欠点はあるものの,YFIゼオライトが未利用資源の有効利用に資する大細孔強ブレンステッド酸性の触媒・担体として機能することがわかった. 劣化を抑制するため,i8rを選択的に塞いだのちにH+を復活させることを意図し,Agイオン交換-還元を試みたところ,i8rに選択的にAgが位置する兆候を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大細孔強ブレンステッド酸性の触媒を探索する計画であったが,YFIゼオライトがそのような性質を持つことがわかっただけでなく,強ブレンステッド酸点が狭いisolated 8-ringに存在することと,そのプロトンがAl周囲のO原子上をホップすることにより,1原子層の壁で隔てられた広い12-12-8-ring system側の分子とも反応できるので,大細孔強ブレンステッド酸として働く機構がわかった.強ブレンステッド酸点が小細孔(isolated 8-ring)に存在することは原子の混み合った場所に強いブレンステッド酸点が発現する傾向と一致しており,また大細孔(12-ring)からアクセスできることは特異な骨格構造に起因しており,本ゼオライトの特異性が明確となり,これらの知見を論文として出版できた. 今後の研究に有用な大スケール合成法の確立,脱Alやイオン交換の起きる場所の詳細もわかり,また触媒作用の特徴も予定より短期間で掴むことができた.プラスチックリサイクルのためのポリオレフィン分解や未利用資源の有効利用のためのナフタレン環のメチル化に使える見通しも立ち,大きな欠点である劣化についてisolated 8-ringを塞ぐ対処法の第一歩まで実験することができた. 字数制限のため省略しているが,シリカモノレイヤー,シリカ塩基処理MFIゼオライトも大細孔強ブレンステッド酸性の触媒として多環芳香族の脱アルキル化やポリプロピレンの分解に活性を持ち,その詳細も解明された. 以上から,当初の計画以上の進展が見られたと評価している.
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今後の研究の推進方策 |
YFIゼオライトについては,2-メチルナフタレンのメチル化,異性化に活性を持つことが明らかになったので,YFIゼオライトの外表面をシリカで被覆し,細孔入口径を制御し,スマートな2,6-ジメチルナフタレンを製造することを試みる.2022年度は第一歩としてシリカ被覆の基礎的研究を行い,MFIなど先行のゼオライトで可能であった細孔入口径制御が,この大細孔強ブレンステッド酸性ゼオライトでも可能かどうか調べる.またメチル化の際にisolated 8-ringの存在によって劣化が速い問題について,Agで小さい細孔を塞ぐことで対処を試みる.Agイオン交換と還元の基礎的研究を行い,細孔特性などがどう変化するかを調べる.これらを組み合わせ,ゼオライトの世界での夢の一つであった,形状選択性を利用し,未利用のナフタレンを高分子のプラットフォームする道を拓く第一歩としたい. シリカモノレイヤー,シリカ塩基処理MFIについてもそれぞれの応用分野で検討を続ける.
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