研究課題/領域番号 |
21H01749
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
森山 悟士 東京電機大学, 工学部, 准教授 (00415324)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | グラフェン / 超格子 / 六方晶窒化ホウ素 / トポロジカル物性 / バレーホール効果 / TMDC |
研究実績の概要 |
本研究では、グラフェンと六方晶窒化ホウ素(Hexagonal boron nitride: hBN)の積層構造で形成されるモアレ超格子系をチャネルとした電子素子を開発する。電子デバイスとしての量子制御を実現し、バレーという量子自由度を操作するエレクトロニクスへの展開、超伝導やトポロジカル物性を活かした量子機能創発による、原子層超格子工学を確立することを目指す。本研究によって、量子情報処理システムやエレクトロニクスへの応用に関して物理現象の解明から基本設計・デバイス化までの知的資産を形成できると考える。現在、バレー流の電気的検出に成功した段階から、デバイスとしてバレー流の電気的制御を実現、さらに原子層超格子系におけるトポロジカル物性の特徴を活かした量子機能を創出することを目的とする。実験では、伝導チャネルとなるグラフェンを絶縁体であるhBNで挟み込んだ原子層ヘテロ構造の作製を基礎とする。伝導チャネルとしては、2022年度から遷移金属ダイカルコゲナイド(Transition metal dichalcogenide: TMDC)の原子層材料も対象とするために、2021年度はその具体的な材料の選定、モアレ超格子構造実現のための試料作製プロセスの詳細、電子輸送測定環境を検討した。基本的な原子層デバイスを作製するためのプロセス技術は確立しており、2021年度は積層構造作製の実験環境を拡充し、より高いスループットでの原子層積層構造作製を実現した。また電子素子評価のための極低温・強磁場・低ノイズ測定環境を構築し、低温から室温に渡ってのシームレスな電気伝導特性、磁気輸送特性評価を可能とした。そして実際にグラフェン素子の磁気輸送特性の精密測定に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、積層構造作製の実験環境を拡充を実施し、複数の原子層積層構造を並行して、また高いスループットでの素子作製を行うことが可能となった。また電子素子評価のための極低温・強磁場・低ノイズ測定環境を構築し、低温から室温に渡ってのシームレスな電気伝導特性、磁気輸送特性評価を可能とした。実際に電子輸送測定を実施し、グラフェン素子の磁気輸送特性の精密測定に成功しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は伝導チャネルとしてグラフェンのみならず遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)の層状物質材料を新たにチャネルとして活用し、六方晶窒化ホウ素(hBN)との積層構造を実現することで、高品質なチャネル状態の保持と2次元半導体としてのTMDCおよびTMDC/hBN積層構造におけるトポロジカル物性の発現・解明も視野に入れて研究を進める。具体的なTMDC材料として、二テルル化モリブデン(MoTe2)、タングステンテルライド(WTe2)等を選定し、具体的な素子作製プロセスと電気伝導特性評価の手法を検討した。前年度に確立した素子作製プロセスと電気伝導測定評価システムを活用し、各原子層材料の積層角度や層数を組み合わせた様々な原子層積層構造の作製と電子輸送特性評価を実施する。
|