研究課題/領域番号 |
21H01765
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高藤 誠 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50332086)
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研究分担者 |
杷野 菜奈美 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 外国人客員研究員 (80816489)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オキサジンポリマー / ナノ粒子 / 熱硬化性樹脂 / 相分離 / 発光性フィラー |
研究実績の概要 |
本研究では、従来技術とは異なる発想に基づく、メカニカルシェア(剪断)フリー・添加剤フリーのコンポジット化技術の開発を目指し、固体ポリマー内部での異種モノマーのin-situ重合・架橋反応とポリマー鎖成長に伴う自発的相分離による有機ナノフィラーの”その場”合成による光機能性透明ナノコンポジット材料の創製に取り組んでいる。 ここでは、溶液中、無触媒で重合・架橋することで粒子形成する熱硬化性のオキサジンポリマーに着目し、我々が開発した複素環アミンであるトリアジナン系化合物とフェノール性分子とのポリマーマトリックス中での熱硬化反応に伴うナノ粒子フィラーの形成について評価している。マトリックスポリマー中で複素環アミンとフェノール性分子の重合・架橋反応が進行し、反応にともなってマトリックス内部での相分離により数10から数100nmの粒子状のオキサジン系ポリマーが形成されることを確認した。粒子の形状やサイズはマトリックスポリマーの極性に依存していると考えられる。また、オキサジンポリマーの極性や電荷による相分離構造の制御を実現することを目的として、オキサジンポリマー系粒子の化学構造の制御に取り組んでおり、長鎖アルキル基やアミノ基を導入した粒子の合成に成功している。 これまでの研究成果は、国際学術誌に学術論文として1報が掲載されるとともに、国際学術会議での研究発表3件、国内学術会議での5件をあわせた8件の研究発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、光反射・散乱や熱線吸収、発光などの光機能をもつ有機ナノフィラーが均一に分散・充填したポリマーコンポジット材料への応用を目的とし、固体ポリマー内部での異種モノマーのin-situ重合・架橋反応とポリマー鎖成長に伴う自発的相分離による有機ナノフィラーの形成とその形態制御について検討している。溶液中、無触媒で重合・架橋することで粒子形成する熱硬化性のオキサジンポリマーに着目し、我々が開発した複素環アミンであるトリアジナン系化合物とフェノール性分子とのポリマーマトリックス中での熱硬化反応に伴うナノ粒子フィラーの形成について評価した。マトリックスポリマーとして汎用ポリマーであるポリスチレン(PS)、エチレン-酢酸ビニル共重合(EVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)を用い、トリメチルトリアジナン(TMTA)および1,5-ジヒドロキシナフタレン(DHN)との混合溶液からキャストフィルムを作製し、フィルムを加熱した結果、いずれの場合もTMTAとDHNの重合・架橋反応に伴う着色が観察された。レーザー顕微鏡によるフィルム内部の観察の結果、いずれも粒子が数10から数100nmサイズの粒子状物が形成されていたが、形状およびサイズはマトリックスポリマーに依存して大きく異なることを確認した。マトリックスポリマーの極性や物理状態の違いよるものと考察しているが、さらなる検討によりそのメカニズムの解明を進める。 また、粒子の極性や電荷を変えることで相分離構造が変化するか調査するため、種々の官能基をもつフェノール性モノマーを用いた溶液中での粒子形成について検討し、長鎖アルキル基やアミノ基などの官能基を導入することに成功した。今後、これらのフェノール性モノマーを用いたポリマーマトリックス中での重合によるフィラー形成について検討する。
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今後の研究の推進方策 |
固体ポリマーマトリックス中での重合・架橋反応の検討:1,5-ジヒドロキシナフタレンをモノマーとするマトリックスポリマー中での重合・架橋反応によるフィラー化のメカニズムを解明するとともに、同技術を様々なフェノール性モノマーに展開する。具体的なモノマーとして、ジヒドロキシナフタレンの位置異性体、平面性多環フェノール類、非平面性フェノール類などを用い、特に発光などの光機能との関係について調査する。 有機ナノフィラーの形状制御、分散制御:1,5-ジヒドロキシナフタレンをモノマーとするマトリックスポリマー中での重合・架橋反応によるフィラー形成に関して、モノマー濃度および反応温度(マトリックスの流動性)と相分離構造の関係について詳細に調査する。マトリックスの流動性と重合により成長したフィラーとの相溶性を制御することで、フィラー形状の制御を試みる。 研究成果については、知財と関連するものを除き、国内・国際学術会議で速やかに報告するとともに、国際学術誌への投稿を進める計画である。
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