研究課題/領域番号 |
21H01783
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
秋山 佳丈 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (80585878)
|
研究分担者 |
保地 眞一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10283243)
諫田 泰成 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 部長 (70510387)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 凍結保存 / 急速解凍 / レーザ加熱 |
研究実績の概要 |
本研究では,従来のように凍結保護剤により化学的もしくは生物学的に細胞内外の水をガラス化するのではなく,物理的アプローチにより凍結および解凍の速度を究極的に高めることで,様々な細胞に対応可能な凍結保護剤フリーの次世代凍結保存技術を創出することを目指している.この新しい凍結保存技術の確立に向けて,本年度は以下の項目に取り組んだ. 1.凍結状態の評価方法の開発:また,蛍光色素の凍結濃縮による自己消光を利用し,凍結液滴がガラス化しているか結晶化しているかを簡易的に判別できる技術を確立した.本手法より,細胞と同濃度のタンパク質を含む液滴のガラス化に必要な冷却速度は毎秒1万度程度であることが分かってきており,この速度は,これまでに推定した細胞の臨界冷却速度とほぼ一致していることが確認できつつある. 2.処理細胞数の増加に向けた高密度吐出法の確立:従来の凍結保存法では, 1バイアル当たり100万個程度の細胞が凍結保存可能であるが,本手法は,現状1回の操作で300細胞程度しか凍結できなかった.そこで,伝熱解析結果に基づき,従来200マイクロメートル間隔で格子状に吐出していたものを,75マイクロメートル間隔まで縮小し高密度吐出しても細胞の凍結保存に必要な冷却速度を維持できることを確認した.加えて,細胞濃度を5倍に高め1滴1細胞で吐出できる条件を見出することで,1回の凍結処理あたりの細胞数を300から1万にまで高めることに成功した.また,細胞生存率も,従来と同等であることを確認できつつある. 3.レーザ加熱による超瞬間解凍:試料を直接加熱可能なレーザ解凍技術を確立に向けて,レーザ照射系の構築を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザー解凍に関しては系の構築に留まったが,凍結状態の簡易判別法や高密度吐出凍結法を確立できたいので,概ね予定通り進んでいると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,以下を予定している. 1.超瞬間凍結法の凍結困難サンプルへの適用:凍結困難サンプルに,超瞬間凍結法の適用を試みる.具体的には,低温保存も難しく保存期間が一週間程度と短いヒト血小板や共生関係などからバイオリソースとして注目されるゾウリムシを想定している. 2.レーザ加熱による超瞬間解凍:卵子のような大型の細胞は,上記2による解凍速度でも不十分な可能性が高いため,試料を直接加熱可能なレーザ解凍技術を確立する.次年度は,レーザ解凍実験を行い,本手法の有用性を検証する. 3.液滴単独落下による超瞬間解凍:昨年度確立出来なかった液滴単独落下による超瞬間解凍法を完成させる.現在は,液体窒素冷却した凍結基板上に,細胞を含むインクジェット液滴を堆積させることで超瞬間凍結を実現している.そして,その後,細胞を含む液滴を凍結基板ごと温浴して解凍している.しかし,液滴と同時に,凍結基板も液体窒素で冷却されているため,温浴時に解凍速度を低下させる原因となる.これを,衝撃を与えて,液滴のみを凍結基板から落下させて温浴解凍することで,解凍速度の向上を実現する.また,レーザー解凍法の適用も検討する.
|