研究課題/領域番号 |
21H01814
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 秀人 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (00452425)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ナノデバイス / 電子顕微鏡 / 原子スケールその場観察 |
研究実績の概要 |
ナノ材料が気体中において加熱や電圧印加や電子線照射によって構造変化する過程を環境制御型透過電子顕微鏡(ETEM)で原子スケール観察すると同時に、ナノ材料の電気伝導特性を測定することを可能とするシステムの構築に取り組んだ。ナノ材料への電圧印加と電気伝導測定を可能にする電極と配線を備えたパターン基板を微細加工技術(フォトリソグラフィー、スパッタ蒸着、電子線リソグラフィー)を駆使して作製した。ナノ材料の加熱に関しては、試料を加熱可能な市販のTEM加熱ホルダーを利用することで実現した。TEM観察・評価対象のナノ材料として、まずは金とアルミニウムのナノワイヤーを電子線リソグラフィーとスパッタ蒸着によって作製した。それらのナノワイヤーの原子スケール構造をTEM観察し解析すると同時に電気伝導特性を測定することに成功した。次に、金属酸化物ナノワイヤーを電子線リソグラフィーとスパッタ蒸着によって作製し、その原子スケールTEM観察と電気伝導特性測定を行った。さらに、金属酸化物ナノワイヤーを酸素ガス中でETEM観察と電気伝導測定をした。酸素ガス中で金属酸化物ナノワイヤーに直径1nm程度まで細く絞った高い電流密度の電子線を照射することで、照射領域の構造を局所的に変化させることができることを見出した。TEM構造解析により、電子照射領域はアモルファス構造に変化することを明らかにした。また、電子線照射による構造変化の導入によりナノワイヤーの抵抗値が増加することも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスによる研究環境の変化や、研究室の体制変更などもあったが、着実に研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
金属や酸化物のナノ材料が気体中において加熱や電圧印加や電子線照射によって構造変化する過程を環境TEMで原子スケール観察すると同時に、ナノ材料の電気伝導特性を測定することで、その構造と電気伝導特性の関係を明らかにすることを目指す。観察・評価対象のナノ材料として、PdとPtの金属ナノワイヤーを電子線リソグラフィーとスパッタ蒸着によって作製する。また、SnO2やZnOの金属酸化物ナノワイヤーは電子線リソグラフィーとスパッタ蒸着による作製に加えて、CVD合成や水熱合成により結晶性の良いナノワイヤーの作製も試みる。PdやPtやSnO2やZnOのナノワイヤーは水素や一酸化炭素ガス中で電気抵抗が大きく変化することからガスセンサーとして動作することが知られている。水素や一酸化炭素ガス中でセンサーとして動作している状態で、各種ナノワイヤーを環境TEM観察することにより原子スケール構造を明らかにし、さらに電子エネルギー損失分光法により電子状態を調べる。ガス中と真空中の各種ナノワイヤーの原子スケール構造・電子状態を比較することで、センサー動作(抵抗値の変化)の原因を明らかにし、センサー動作原理に関する知見を得る。特に、ナノワイヤーの表面および内部の酸化・還元状態に着目し研究を進める。
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