研究課題/領域番号 |
21H01865
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
湯口 貴史 山形大学, 理学部, 教授 (00516859)
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研究分担者 |
笹尾 英嗣 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, リーダー (10421687)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地層処分 / 岩石・鉱物・鉱床学 / マトリクス拡散 / 花崗岩 / 長石 |
研究実績の概要 |
本研究は,岩石学的特性と物質移動特性を結び付けたマトリクス拡散に関する物質移動モデルの構築を実施する。本研究は4つのSTEPを設定し,2021-2024年度の4ヶ年で達成する計画である。STEP1-STEP3は記載岩石学的手法と室内実験的手法の両面からなり,段階的に研究を実施する。STEP4は取りまとめとして,概要調査の際に岩石調査に基づく物質移動の遅延能力の評価技術を体系化する。
2022年度は第一に【STEP1・2】の成果として「Using cathodoluminescence to identify oscillatory zoning of perthitic K-feldspar from the equigranular Toki granite」を国際誌American Mineralogistに公表した。本研究では等粒状花崗岩中でカリ長石中のオシラトリゾーニング(OZ)をカソードルミネッセンス(CL)像により初めて見出し,記載を行った。これはカリ長石の成長様式を捉えることができる重要な手がかりである。この成果は,今後の微小孔の三次元的な分布を評価する際に,成長構造と関連づけて議論することを可能にした。
第二に,岩石試料の実効拡散係数を評価する際には,割れ目そして割れ目に充填する鉱物を記載することは重要である。実験対象とする試料に対して観察・記載を行い,その成果に基づき,「Morphological and chemical characterization of secondary carbonates in the Toki granite, central Japan, and the evolution of fluid chemistry」として国際誌American Mineralogistに投稿し,受理された。このデータは,鉱物中の微小孔と合わせて,地質・岩石学的特性と物質移動特性を結び付けたマトリクス拡散に関する物質移動モデルの構築に資するものとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度においても「【STEP1】結晶質岩中の微小孔の産状の解明」および「【STEP2】微小孔の形成時期・形成プロセスの解明」に関連する2つのテーマの研究を進捗させた。カリ長石の内部構造に関する論文は国際誌への掲載に至った。「【STEP3】微小孔の物質移動経路としての特性の解明」では,岩石学的特徴の異なる13試料に対して実施した透過拡散試験によって実行拡散係数を取得し,日本地質学会での発表を行った。以上のことを総合的に勘案し,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目となる2023年度は,STEP1・2において鉱物(カリ長石・斜長石)中の三次元的な微小孔の分布データの拡充を図る。また長石の変質(斜長石のアルバイト化とカリ長石のパーサイト化)と微小孔の関係性の解明に向けて議論を深める。得られたデータはSTEP3で取得した鉱物の空隙率,および透過拡散試験による実効拡散係数との比較を進め,物質移動経路としての微小孔の評価を進める。得られた成果は順次取りまとめ,日本鉱物学会や日本地質学会での学会発表を行う。
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