研究課題/領域番号 |
21H01885
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺嶋 正秀 京都大学, 理学研究科, 教授 (00188674)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | タンパク質 / 反応 / 時間分解 / 顕微鏡 / 液滴 |
研究実績の概要 |
本研究では、過渡回折格子法の空間分解能と感度を向上させることによって、マイクロメートル程度の空間分解とマイクロ秒程度の時間分解能を併せ持つ検出システムを作る。これを用いて、微小液滴内での拡散運動やタンパク質構造変化を時間分解で観測できるように改造し、バルク中のそれらとどのように異なるかを明らかにすることを目指している。 本年では開発してきたTGシステムをベースにして、微小領域の分子運動や熱力学量計測を可能にするTG測定システムの改良を試みた。これまでのシステムでは、まだ感度と空間分解能が不足していたため、新しい対物レンズや非球面レンズを使ったシステムに改造した。これまでにマイクロメートル領域での熱グレーティング信号を検出できるまでにはなっているが、さらに感度を向上させるため、ヘテロダイン法を用いた。光学マスクを用いて2本に分割した励起パルスと、位相整合させたプローブ光を凹面鏡で集光し、ヘテロダイン検出にして、適切なスタンダードサンプルを用いて空間分解能を測定し、数10マイクロメートルの分解能が得られていることを確認した。 さらに、micro-stopped-flow systemを作成し、2液混合で反応を開始するシステムを構築することに成功し、これを用いて病気に関連するαシネクレインというタンパク質の構造変化を明らかにすることに成功した。一方で、対象とすべきタンパク質の反応ダイナミクスを明らかにするため、BlrP1と呼ばれる青色センサータンパク質の光反応を明らかにした。その結果、このタンパク質は単なる光センサーという役割だけではなく、光強度も感知する新しい役割を持つことを見出した。また、多くの研究者が興味を持っている光センサータンパク質PYPの反応を調べ、その反応機構を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい対物レンズや非球面レンズを使ったシステムに改造して、マイクロメートル領域での熱グレーティング信号を検出できた。 また、マイクロストップドフローシステムを作成し、過渡回折格子法と組み合わせることで溶液交換によって誘起される変化を時間分解で追跡できるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
比較測定対象として、バルク中における光反応性タンパク質反応機構の解明を行う。例えば、我々が開発してきたeBLUFというセンサータンパク質を用いる。このタンパク質の光誘起の選択的ダイマー化反応を詳細に調べる。また、分子間相互作用の機構を調べるため、PixDやPYPと呼ばれる光センサータンパク質がいかにして光誘起によって分子間相互作用を変え機能に結び付いているか、いかに液滴形成と相関するかなど、タンパク質の反応機構を調べる。
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