研究課題/領域番号 |
21H01897
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石井 邦彦 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (80391853)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 蛍光相関分光 / 一分子計測 / 生体高分子 / 動的不均一性 / 階層的ダイナミクス |
研究実績の概要 |
1.走査型二次元蛍光寿命相関分光法(2D-FLCS)による生体高分子の広ダイナミックレンジ計測 本課題では、従来の2D-FLCS法の測定可能時間領域(上限約1ミリ秒)を大幅に拡大することを目的として、基板固定した生体高分子に対する応用を検討した。FRET標識したDNAホリデイジャンクション(HJ)をカバーガラスに固定し、試料ステージを走査しながら2D-FLCS計測を行うことで、約200ミリ秒まで2D-FLCS計測を行えることを確認した。また本測定の結果、HJの異性化速度に不均一性が存在すること、および各異性体の構造がマグネシウムイオン濃度に依存する揺らぎを示すことが分かった。これらの結果をまとめ、学会発表および論文発表を行った。この成果は、従来の2D-FLCS法および一分子FRET法ではカバーできなかった、数マイクロ秒から数百ミリ秒の5桁にわたる広ダイナミックレンジでの一分子ダイナミクス計測を実現し、生体高分子ダイナミクス研究におけるその有用性を示すものであり、今後の応用が期待される。 2.多点相関解析によるダイナミクスの不均一性・階層性の検出 本課題は、蛍光信号の多点相関関数計測を応用して、生体高分子ダイナミクスの不均一性・階層性を解明することを目的とする。本年度は、従来の2D-FLCSで用いられていた二次元マップ解析に代わる手法を開発するために、その第一段階として、三次元の光子相関マップを用いた独立成分分析を検討した。その結果、二次元マップ解析では不可能であったモデルフリー成分抽出が可能であることを示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
走査型2D-FLCSの開発においては、基板固定した生体高分子への2D-FLCSの適用方法を確立し、HJの構造異性化ダイナミクスについて興味深い結果を得た。さらにこの成果の学会発表および国際学術誌での論文発表を行うことができた。本課題は計画通り進行していると言える。 多点相関解析によるダイナミクスの不均一性・階層性の検出においては、多点相関解析を活用する新たな着想を得たため、当初の計画を若干変更し、三次元光子相関マップの独立成分分析の応用を開始した。既に予備的な研究結果を得ており、順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
生体高分子の広ダイナミックレンジ計測においては、走査型2D-FLCSの開発をほぼ終えている。今後はそこで得られた基板固定分子計測のノウハウを活用して光子データの新規解析法の開発を行うとともに、自由拡散単一分子の長時間相関計測の可能性を検討する。多点相関解析の応用においては、当初の計画を若干変更し、多次元の光子相関マップを活用した広い意味での不均一性・ダイナミクスの計測手法の開発を進める。
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