研究課題/領域番号 |
21H01956
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
小野 晶 神奈川大学, 工学部, 教授 (10183253)
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研究分担者 |
近藤 次郎 上智大学, 理工学部, 教授 (10546576)
山田 亮 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
藤原 章司 神奈川大学, 工学部, 助教 (60737196)
田中 好幸 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70333797)
鳥越 秀峰 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (80227678)
大樂 武範 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80642636)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | metallo base pair / DNA nanowire / nanocluster / DNA architecture / oligonucleotide |
研究実績の概要 |
第一に、可溶性“Ag(I)-DNAナノワイヤー”を合成したことである。即ち、緩衝液中、ドデカヌクレオチドとAg(I)イオンを混合することで、Ag(I)-DNAナノワイヤーを形成させる手法を見出した。塩基配列5’-d(CGCGCBCBCGCG)-3’ (B = 5-bromouracil)が重要であり、塩基配列を変えると、形の不揃いなAg(I)-DNA複合体が出来る。結晶構造から、このAg(I)-DNAナノワイヤーは、DNA二重鎖内部に11ヶのAg(I)イオンが連続していた。1残基短いウンデカヌクレオチド5’-d(CGCGCBCBCGC)-3’が、溶液中でAg(I)-DNAナノワイヤーを形成することを、可視・紫外、CD、NMR分光法、及び質量分析法を用いて証明した。評価の高い国際誌(Angew. Chem. Int. Ed., 2022, 61, e202204798)に掲載された。 第二に、塩基部にチオカルボニル基を有するデオキシオリゴヌクレオチドを化学合成し、金属イオン結合を調べた。即ち、6-チオグアニン塩基対に多様な金属イオンが結合し、DNA二重鎖を安定化することが分かった。また、塩基部にチオカルボニル基を有するRNAオリゴヌクレオチドを化学合成し、金属イオン結合を調べた。チオカルボニルを有するRNAは、対応するDNAオリゴヌクレオチドに比較して、多様な金属イオンを結合した。 第三の成果は、塩基を化学修飾することで、様々な金属イオンをDNA二重鎖に導入する手 法を開発したことである。4N-カルボキシメチルシトシン(X)を含むオリゴヌクレオチドを合成し、DNA二重鎖中にX-Xペアを形成させた。Cu(II)イオン存在下、安定なX-Cu(II)-Xが形成された。X-Cu(II)-Xは平行型二重鎖を安定化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度、ウンデカオリゴヌクレオチドと11ヶのAg(I)イオンから形成される短鎖のAg(I)-DNAナノワイヤーの合成研究を完結し、国際誌に発表した。Ag(I)-DNAナノワイヤーが、結晶中のみならず、溶液中でも安定に形成されることを証明した。短鎖であること、溶液中安定であることから、取り扱いが容易であり、種々の応用研究に利用することが期待される。第一に、Ag(I)-DNAナノワイヤーの物性解析に有用であると期待される。さらに、Ag(I)-DNAナノワイヤーを連結することで、全く新しい構造を有する超分子複合体を構築することが期待される。また、塩基部にチオカルボニル基を有するオリゴヌクレオチドの合成法を開発した。即ち、6-チオグアニン(6-チオシサントシン)塩基対に多様な金属イオンが結合し、DNA二重鎖を安定化することが分かった。また、塩基部にチオカルボニル基を有するRNAオリゴヌクレオチドを化学合成し、金属イオン結合を調べた。2-チオウラシル、4-チオウラシル、2,4-ジチオウラシル、2-チオシトシン残基を有するRNAオリゴヌクレオチドの合成法を開発した。チオカルボニルを有するRNAは、対応するDNAオリゴヌクレオチドに比較して、多様な金属イオンを結合した。即ち、「金属-DNAナノワイヤー」の合成と機能物質への利用研究は順調に進捗している。 「DNA-金属ナノクラスター複合体」の新規合成手に目途が付いた。チオカルボニル基を有するオリゴヌクレオチド-金属イオン複合体を形成させた後、還元剤で処理することで金属ナノクラスターとする。金属と親和性の高いチオカルボニル基が結合することで金属ナノクラスターが溶液中で安定に存在することを期待するものである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の目的は、オリゴヌクレオチド(短鎖の合成DNA)と金属イオンから超分子複合体を合成する手法を開発し、さらに機能性物質として利用するための道筋を開拓することである。超分子複合体として「金属-DNAナノワイヤー」 と「DNA-金属ナノクラスター複合体」を研究対象とする。最前線に立つ研究者の共同研究であり、合成技術、構造解析技術、物性解析技術を駆使して“ナノ構造化学”の発展に貢献する計画である。 「金属-DNAナノワイヤー」の合成と利用:2023年度以降の研究は、第一に2022年度に国際誌に報告した「短鎖のAg(I)-DNAナノワイヤー」を物性解析(導電性、スピン偏極状態など)利用する。解析装置と技術を有する共同研究者を探して、測定を依頼する。また「短鎖のAg(I)-DNAナノワイヤー」を構造ユニットとする新規ナノ構造体の構築を試みる。 塩基を化学修飾することで、様々な金属イオンをワイヤーに導入する手法を開発する。一例をあげると、核酸塩基のカルボニル基をチオカルボニル基に変換することで、AuやCuをはじめ、様々な遷移金属イオンが結合することが分かっている。金属イオンが変わると、磁性、光反応性、導電性など、物性のスペクトルが多様化すると期待される。 「DNA-金属ナノクラスター複合体」の合成と機能化:金属イオン(主にAgイオン)とオリゴヌクレオチドの混液を還元剤 (NaBH4など)で処理すると、金属ナノクラスターが生成して溶液が蛍光を示すが、オリゴヌクレオチドが結合することで安定な「DNA-金属ナノクラスター複合体」が形成される。2022年度、チオカルボニル基を有するDNA/RNAオリゴヌクレオチドの合成法を開発した。2023年度以降は、還元性のアルデヒド基の利用することで、効率的にAgナノクラスターを合成する反応条件を探索する。
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