研究課題/領域番号 |
21H01959
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西野 智昭 東京工業大学, 理学院, 准教授 (80372415)
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研究分担者 |
藤井 慎太郎 東京工業大学, 理学院, 特任准教授 (70422558)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 単分子接合 / STM / 電気化学 / 電気二重層 / DNA |
研究実績の概要 |
近年,ナノ科学・テクノロジーへの興味の高まりを背景に,優れた機能を有するnmスケールの微小構造体が盛んに開発されている.これに伴い,微小構造体の化学的特性,物性の計測を可能とする,高い空間分解能を有する分析法が強く求められている.固体最表面に対しては原子スケールにおける計測法が精力的に開発されている一方,高さ方向に空間分解能を有する計測法は未踏領域として残されている.そこで,本研究では,多岐にわたる化学現象に関与する表面電位に着目し,電極最表面だけでなく,高さ方向にもサブnmオーダーの空間分解能を有する表面電位の三次元計測法を開発することを目的とする. 開発する手法では,単分子電位計を開発しこれをDNAに結合させることにより表面からの高さを規定し,高さ分解能を実現する.当該年度は,足場となるDNAの伝導特性,および電極への結合様式について検討した.従来,DNAの単分子接合は,DNAの両端に電極結合性官能基を導入することにより作製されている.本結合様式ではDNAの鎖長の増加に対して伝導度が急激に減少する欠点がある.そこで,DNAの末端の一方のみに2つの結合性官能基を導入した結合様式にてDNA単分子接合を形成しその伝導特性を計測した.その結果,DNA鎖長を増加させても伝導度が減少しない接合を実現することができた.電気伝導がDNAの一端のみを経由して生じるため,鎖長依存性が見られなかったものと考えられる.また,その接合は部分的に破断してもDNAの相補鎖形成により自発的に修復する特性を示すことを見出した.現在,単分子接合を利用した多様な単分子素子が開発されているが,その寿命は室温では10 msの桁である.今回の研究で見出した自己修復性は単分子接合の脆弱性を解決し得るものであり,単分子素子の実用化に大きく貢献できるものと期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において開発する計測手法においては,単分子電位計と足場DNAを結合させた複合体の伝導特性を指標として,試料表面の面直方向における電位分布を決定する.したがって,その構成要素である単分子電位計,および足場DNAの伝導特性に関する知見は今後の研究を展開するために不可欠である.加えて,後者のDNAについては,単分子電位計と試料表面の距離を規定する役割を担うことから,伝導特性と接合構造の相関は十分に検討する必要がある.当該年度では,従来のDNA単分子接合における結合様式に加えて,異なる結合様式のもと新たな構造を有する単分子接合を作製,測定することにより伝導特性と構造について明らかにできた.本成果に基づき今後,より円滑に研究が遂行できるものと期待される.したがって,当該年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と自己評価する.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,DNAを足場に用いた単分子電位計の開発を行う.電気化学電位によって電気伝導度が急峻に変化する分子を単分子電位計として用いることにより,伝導度-電位の関係に基づき,伝導度計測によって試料表面の電位を決定する.上記の原理を実証し,単分子電位計を開発する.また,単分子電位計のDNAへの固定化による電位計測の影響についても明らかにする.始めに,これらの分子をAu基板に直接吸着させ,その電気伝導度を計測する.単分子伝導度の測定は,申請者が豊富な実績を有する走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いたブレイクジャンクション(BJ)法により行う.検出対象の単分子をSTM探針と金属基板間のナノギャップに捕捉し,そのトンネル電流を計測することにより伝導度を決定する.測定を水溶液中にて行い,基板の電極電位を変化させ単分子の伝導度を測定し,伝導度が基板電位に依存して変化することを確認する.伝導度の電位依存性の詳細を明らかにし,単分子を用いた電位決定法の基礎を確立する.本手法によって測定可能な電位範囲は,測定に用いる分子に依存するため,他の分子についても同様に検討し,電位計測の広いダイナミックレンジを担保する.次いで,分子のDNA固定の影響を検討する.分子をDNAの末端に近い塩基位置に導入したコンジュゲートを固相合成法に従い作製する.コンジュゲートをAu基板に吸着させ,その単分子伝導度を計測する.分子を基板に直接固定した場合と同様の測定を行い,伝導度が電位に依存して変化し,電位決定が可能であることを確認する.伝導度の電位依存性が顕著でない場合には,足場DNAの鎖長を短くするなどにより改善を施す.
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