研究実績の概要 |
高活性でかつ高い再利用性・耐久性を兼備し、金属の漏れ出しが無い固定化触媒の開発は、医薬品合成・機能性材料合成といったファインケミカル合成を志向したグリーンケミストリーの推進に重要である。さらに、グリーンケミストリーの観点から、パラジウム、ロジウムなどの貴金属から脱却した、安価で比較的豊富に存在する鉄、コバルト、ニッケル、銅など第4周期遷移金属を活用した固定化触媒の開発が重要である。その一方でこれらの金属は配位子から解離しやすい性質があるため、高い安定性を有し、高活性・高再利用性の固定化触媒の開発はいまだ発展途上の状況である。 そこで研究代表者は、高活性で高再利用性を有する固定化触媒として、ニッケル、コバルト、銅、鉄などと高分子配位子から調製される、ナノ空間を有する分子もつれ型固定化普遍金属触媒の創製とその物質変換反応の開発、医薬品合成への応用を検討している。 該当年度では、高分子配位子とコバルトからなる超分子触媒の開発を行った。その結果、不溶性の高分子コバルト触媒が生成した。XAFS、ICP-MS、元素分析など各種分析の結果からコバルト原子周りの局所構造が同定された。 この触媒を用いると、アリールアルキンの環化三量化反応において特徴的な選択性を示した。通常、アリールアルキンの環化三量化反応では1,2,4-triarylbenzene類が生成するが、この触媒系では1,3,5-triarylbenzene類が選択的に得られることが判った。この系で、1,2,4-triarylbenzene類は検出されなかった。
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