研究課題/領域番号 |
21H01982
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
冨田 育義 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (70237113)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高分子反応 / π共役高分子 / 機能性高分子 / 元素ブロック / パラレル合成 |
研究実績の概要 |
機能性π共役高分子の前駆体となる主鎖型反応性高分子の設計・合成及びその反応開拓に関する研究を展開するために、以前より検討を行ってきたチタナシクロペンタジエン部位をもつ反応性高分子に加えて、同ポリマーから得られるテルロフェン部位をもつπ共役高分子のアルキルリチウムとのさらなる高分子反応により得られる1,4-ジリチオ-1,3-ブタジエン部位をもつ反応性高分子のポスト元素変換反応を検討した。その結果、炭素-リチウム結合の高い反応性を反映し、有機チタンポリマーからは円滑な変換が達成できなかったシロールやジシラヘキサジエンなどの有機ケイ素部位をもつπ共役高分子が得られることが分かった。また、クロスカップリング反応に基づく重縮合によりテルロフェン部位をもつπ共役高分子を別途合成し、それらの有機リチウムポリマーへの変換とポスト元素変換を伴う高分子反応についても検討を行ったところ、同様にスズ、ゲルマニウム、ケイ素などの第14族元素を含む種々の元素ブロックをもつπ共役高分子へと変換できることが示された。さらに、得られたπ共役高分子材料の光・電子特性の評価結果から、付与した元素ブロックの特徴を反映したπ共役高分子が得られていることが支持された。 つぎに、縮環メタラサイクル部位としてチタナフルオレン骨格やジチアチタナシクロペンタジエン骨格をもつモノマーの重縮合を行ったところ、興味深いことに有機金属部位をもつにもかかわらず空気中で安定な高分子が得られることが分かった。つぎに、光・電子特性の評価を行ったところ比較的LUMOエネルギー準位の低いπ共役高分子として特性を有することが示された。さらに、重縮合に用いるモノマーの構造に応じて電子特性の制御が可能となることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主鎖型反応性高分子の反応開拓については当初の計画どおり、新しい高分子反応系を構築することができ、従来の有機チタンポリマーのポスト元素変換だけでは得ることができなかった有機ケイ素骨格などの元素ブロックをもつπ共役高分子が得られるようになったことは特筆すべき点であると考えている。 また、縮環メタラサイクル部位をもつπ共役高分子についても計画どおりに円滑に研究を推進することができた。なお、国際会議にてさらなる分子設計のヒントが得られたことをうけ、これらについても研究を推進することによって、計画よりもさらに広がりをもつ研究内容へと展開することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、主鎖に反応性の金属-炭素結合をもつ反応性高分子の開拓とそれらのポスト元素変換反応の検討を進める。さらに、ポスト元素変換反応により生じる元素ブロックπ共役高分子のさらなる変換反応についても検討を行う。また、他にほとんど類を見ない主鎖型反応性高分子のポスト元素変換というπ共役高分子の新しい合成法の特長を活かし、有機金属ポリマーの合成に用いるジイン類の構造、ポスト元素変換で生成する元素ブロックの構造の組み合わせによって様々な元素や官能基をもつ一連のπ共役高分子のパラレル合成を行う。このことによりHOMO-LUMOエネルギー準位、吸光・発光挙動を自在にチューニングしつつ、所望の特性をもつπ共役高分子の効率の良い設計・合成を推進する。さらに、元素ブロックの特性に基づき、刺激応答性の発光材料や元素ブロックと特定のゲスト分子との相互作用を利用した化学センサーなどへの応用についてもあわせて検討する。 また、縮環部位に有機金属骨格を付与した反応性高分子に関しては、チタナサイクルを有機金属部位にもつ高分子のさらなる設計・合成を推進するとともに、コバルトやジルコニウムを中心金属とした高分子の合成へと発展させる。また、それらの機能性や反応性の評価についてもあわせて検討を行う予定である。
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